2017.01.28
真鶴漁港のレストラン『honohono』
南インドカフェ紀行【1】バイク街のチャイスタンド
暖かな春の気配に包まれたかと思えば、冷たい風が吹き荒れて。
穏やかなカフェライドシーズンに手が届きそうでなかなか届かないこの時季は、
焦らず、コーヒー片手に読み物を楽しむのも吉ですね。
ということで今回から数回にわたり、
先日旅してきたインドのカフェにまつわるお話をお届けしたいと思います。
訪れたのは、首都デリーから南へ2000キロ下った、チェンナイという街。
南インドの玄関口と言われる大きな都市で、2月の平均気温は30度超え。
ダウンジャケットを着ていた成田から一転、いろいろ脱ぎ捨て一気に半袖に。イエーイ!
長年憧れてきた地を、
極力真っ新な心で感じたくて、
大した下調べもなく降り立ったインドは、
なんとまあ、バイクで溢れかえっているではないの!!
クラクションの大合唱の中、
どうしてそれでぶつからないの!? ってくらいの接近戦を繰り広げる人々。
ノンヘル、裸足、4人乗りも当たり前という驚愕の光景を見ていたら、
なんかもう、こっちまでアドレナリンが止まらなくなって、
「日本で言うところの、かつての上野みたいなバイク街がある」と聞きつけ、
たまらず行ってみた。
こりゃ、上野どころの話じゃないではないか!!
詳しくはこのブログのテーマから外れてしまうので省くけれど、
何より感動したのは、パーツショップが連なる中に、
当然のようにカフェスタンドがあること。
シート屋、タイヤ屋、カフェ、ホーン屋、花屋さん、エキパイ屋、という具合に。
以前フランス・パリのバイク街でも同じような光景を見て感動しまくったんだけれど、
明らかな違いは、
カフェスタンドで飲むのがコーヒーではなくて…そう、チャイ!
見てよこのドヤ顔を。
神業を見せつけながらもしっかりカメラ目線である!
チャイは植民地時代に生まれた飲み物だ。
インド産の紅茶葉のうち、質のいいものはイギリスに送られ、
商品にならないクズ葉ばかりが国内に残された。
東インド会社はそれをも余すことなく利益にするべく、
現地の人々にこの苦くて仕方ない紅茶を消費させようとした。
これを美味しく飲む方法として生み出されたのがチャイなのだ。
暖かい気候のせいか、
はたまた虐げられた歴史的背景からなのか、
チェンナイで出会う人々は、
気さくで、陽気で、
笑顔がとても優しい。
居合わせたおじさんたちと談笑していると(と言っても言葉は通じてないけれど)、
バイクで乗りつけた男の子が、
8ルピー(約14円)を店の男の子に手渡し、
湯気を上げるチャイをクイッと飲み干して、
また道の上へと戻って行った。
こ、これが南インド流クールダウンなのねっ!!(キュン死♡)
熱々で、やたら甘くて、スパイシーなチャイの味は、
彼らの知恵と誇りとたくましさの味なのだった。
そして、チラ見えする胸毛がセクシーなチャイおじさんの手は、
なぜか冷たかった。
<小林夕里子>…ライフスタイルエッセイスト。「アクティブ&ナチュラル」をキーワードに、執筆やメディア出演を通じてバイクのある暮らしの喜びを女性の視点から発信。MOTOアウトドアブランド「nomadica」代表。