MOTORCYCLE

Glamsterはセクシーだ

クラシックなフルフェイスが注目を集めている。
その名は、Glamster(グラムスター)。
SHOEIがリリースするそれは、これまでにないものだった。

文と写真/日越翔太(Moto NAVI)

このところ、北米や欧州で開催されるバイクイベントやバイクを扱うSNSを見ていると、みなさまざまなヘルメットを着用していることがわかる。なかでもBELLのBULLITTSHOEIのEX-ZEROアライのラパイド・ネオ(欧州名はCONCEPT-X)などのクラシカルなフォルムを採用した最新のヘルメットをかぶっているライダーが多いことが目につく。なんとなく外国のライダーと言えばノーヘルにサングラス、なんてイメージがあったが、それはもう昔の話のようだ。見た目はもちろん、その機能性にもしっかりこだわっているライダーが多いということか。
そんな世界のヘルメットシーンを賑わすクラシカルなヘルメットシーンに、SHOEIがJ・O、EX-ZEROに続いて投入してきたのが、フルフェイスモデルのGlamster(グラムスター)だ。

正直なところ、筆者は当初、あまりグラムスターに注目していなかった。やはり同カテゴリの先行モデル――BULLITTやラパイド・ネオなどがある以上、SHOEI、今さらか……と思っていたのである。とはいえ以前、SHOEIの関係者と話をしていた際に、「いまのSHOEIのラインナップに欠けているのはどのようなモデルだと思いますか?」と聞かれ、BULLITTやラパイド・ネオのようなクラシカルなフルフェイスじゃないですか、と即答していただけに、SHOEIからも早くこのカテゴリのモデルが出ないかと待ち望んでいたこともまた事実なのだ。出せば後追い、出さねば足りない……。われながらわがままな消費者である。

……と、そんなめんどくさい男が先日、東京都千代田区外神田にあるSHOEIのショールーム、「SHOEI Gallery TOKYO」にて現物と対面できることになった。結論から言うと、印象は大きく変わった。初めてじっくりと見て、そして触って感触を確かめられる貴重な機会を経たことで、筆者は考えを改めた。小泉進次郎環境大臣ではないけれど、グラムスターはとてもセクシーだったのだ。

現物を目にしてまず気づいたのは、そのコンパクトさ。続いて手に取って驚くのがその軽さだ。安全性や空力を考えると、どうしても昔のヘルメットのようにコンパクトで軽いものを作るのは難しい。というより不可能だ。たとえばSHOEIのX-FOURTEENを思い浮かべてほしい。GPライダーも愛用する最高峰モデルは決して軽くはないし、コンパクトでもない。ストリートユースがメインとなるグラムスターのようなモデルとはユーザーが求める方向性が違うためだ。しかし、事実としてX-FOUTEENほどの空力性を求めないライダーだってゴマンといる。欲しいのは愛車のデザインに合ったシンプルで軽快なヘルメット。グラムスターはそんなライダーのためのヘルメットなのだ。

細かいところを見てみよう。あご部分のスリットは開閉機構をオミットすることで軽さと薄さを追求するとともに、直線的な形状は視覚的にスリムな印象を与えるのだという。また、ひたいのエアインテークは開閉可能ながら極めてシンプルな形状を採用。いまどきなデザインの他モデルとは一線を画している。
なお、このコンパクトさを実現するにあたり、もっとも貢献しているのがシールドベース部分のリブ形状。技術的な詳細は公式サイトに任せるとして(そのほうが間違いない&わかりやすい)、Moto NAVI的にいちばん心惹かれたのもまさにそこなのだ。

一見するとその周辺が盛り上がっているように見えるが、実はこれ、シールドベースを残してまわりがシェイプされた結果、盛り上がっているように見えるだけなのだ。女性の骨盤のように、艶やかな膨らみを帯びたラインのセクシーさに、はからずもドギマギしてしまうはずだ。

最新の技術を活かしたクラシカルなヘルメットは、これからも注目を集めるに違いない。曲線を束ねたような流麗なスタイルがセクシーなグラムスターに、シンプルな無骨さを体現する男性的な印象のラパイド・ネオ。そしてクラシカルという点において、最もプリミティブなあり方を示すBULLITT。
ここにきて、ヘルメットはますます楽しいものになってきた。