MOTORCYCLE

TOO EARLY、TO BORN. 早すぎた(?)バイクたち。◆250ccクラス編◆

いまとなってはとても素敵に見えるのに、なぜか販売中はそれが数字に現れなかったバイクたち。
世に出るのがもう数年遅ければ、なんて言いたくなるような早すぎたモデルを紹介。今回は250ccクラスのお話。
※Moto NAVI 2020年10月号に掲載された記事を再編集したものです

text_日越翔太(Moto NAVI) photo_三浦孝明(SW-1ディテールカット)

メモリーズ・オブ・パイクカー。
スズキSW-1(1992)

アニメ映画に出てきそうと言おうか、レトロフューチャーという言葉がよく似合うようなフルカバードボディのスズキSW-1は、日産Be-1などのパイクカーを手掛けたウォーターデザインの坂井直樹氏がコンセプトデザインを担当した250ccモデル。その何にも似ていない個性的なデザインから、それまでバイクに興味がなかった層の注目を大いに集めた。

……が、当時はまだ80年代のバイクブームの余韻も残る90年代初頭。ネイキッドブームがあったにせよ、まだまだライダーの多くを占めていたスポーティに走りたい派にとっては、フルカバードされた車体の重さからくる鈍重な走りと、(悪く言えば)もったりしたスタイルは響くわけもなく、わずか2年ほどでSW-1は姿を消した。しかし、いまではその唯一無二のスタイルで評価されているのだから、流行り廃りなんてものは予想ができないし、過ぎ去ってみればその喧騒も沈黙もとても奇妙に見えるもの。ほら、もういまとなってはもう、なんで白いたいやきブームなんてあったのか全く思い出せないでしょう……?

閑話休題。こちらがみんな大好き(?)日産のパイクカー兄弟。並べてみると、そこはかとなく同じオイニー(匂い)がする。丸みを帯びたボディと丸っこい目がそう思わせるのだろう。Be- 1(左上)、パオ(右上)、フィガロ(左下)、ラシーン(右下)はすべてSW-1と同じく、坂井直樹氏がデザイン。
発売当時、ドラえもんをCMに起用したこと以外、すっかり記憶の隅に追いやられてしまっていたラシーンも、いまやナウいヤングに人気の車種と聞く。SW-1同様、いつどこで何が再評価されるかなんてわからないものだ。

スズキSW-1(1992)

●サイズ=全長2105mm×全幅840mm×全高1095mm ●ホイールベース=1380mm ●シート高=770 mm ●タイヤ=前110/ 80-16、後140/70-15● タンク容量=12L● 車重=183kg ●エンジン=249cc空・油冷4ストローク単気筒 ●最高出力=20ps/8000rpm ●最大トルク=2.1kgf・m/5500rpm ●新車時価格¥688,000 ※税抜 ●中古車相場 ¥380,000~¥550,000(20年10月現在、編集部調べ)