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北のボ日記 #1「インチアップに耐えられなかったアジアンタイヤの話」

突然やってきたボルボS80との生活は、残念なアジアンタイヤで始まった。
そろそろ雪が降り始める時期とあって、早めに冬タイヤへと履き替えることに。
台湾のナンカンのスタッドレスタイヤは、北海道の雪に効いてくれるのか?

文と写真/淺川覚一朗

――というわけで、突然やってきたボルボS80との生活が始まりました。

スウェーデン王室御用達のこのクルマが、14年落ち9万kmとはいえ破格の20万円(!)だったのは、前オーナーが買い替えでの下取りや買い取りの値段の安さに憤慨して個人売買を選んだからで、19年落ちで瀕死のBMW316tiの車検切れに直面していた僕にとっては、まさに渡りに船でした。
とはいえ、部品の欠品や、エンジンが始動でグズグズしたりと相応の難は抱えています。そのへんは順番にケアしていくことになるでしょう。
そして、一番の難はというと──ホイールとタイヤでした。

このモデル、S80 3.2AWDのオリジナルサイズは225/50R17です。そこに、純正サイズで最大の245/40R18のラウフェン(韓国のハンコックの“セカンド”ブランド)のS FIT EQというタイヤの組み合わせが、それはもう色々と残念なものだったわけです。
インチアップで重量増のホイールは、まっすぐ走るだけでドシドシ、バタバタした挙動になるし、総重量2t弱というS80を支えるには、低扁平で薄いショルダーの剛性がどうにも足りず、段差ではリムまで打ったのかと思うほどの突き上げがきます──ダメだこりゃ!

またボルボのセンターキャップのついたホイールも、ディーラーのサービスフロント氏に一目で看破されてしまいました。
「純正じゃないし、サイズ違いのセンターキャップを無理やり押し込んでますね」
ホイールを外してみると、阿部商会の刻印がある中国製のものでした。この時期のボルボのハブ径はそれまでの65.1mmと現行の63.4mmが混在した過渡期で、キャップは古いものが“流用”されていたようです。
「外してみたら──」「バラしてみたら──」なんてことは、これからも続くのでしょう──笑えばいいと思うよ(いや、泣いてますが)

夏タイヤのことはまた先に考えることにして、前オーナーがこの冬のために用意していたスタッドレスタイヤに早々に履き替えることにしました。今度のホイールは間違いなく純正です。そしてタイヤは台湾のナンカンのESSN-1というモデルです。そう、またアジアンなんですよ、それもスタッドレスが。
秘密基地──我が師、ニッキーのガレージにクルマを運び、手伝ってもらってタイヤを交換します。

「カクさん、雪の降らない国のスタッドレスなんて大丈夫かな?」
「とりあえずここにあるんだから履いてみますよ」
考えるな! 感じろ! と飛び込んでみたら、ドライ路面を走っただけでいきなり好印象だったのは予想外でした。ロードノイズが、充分溝の残っていた夏タイヤのラウフェンより少ない。じつに静かなんです。そうした風合いを感じれば、雪の降るのが待ち遠しくなってくるというものです。

そして12月、北海道の本格的な雪と氷の季節になって、雪がみっしり積もった路面、圧雪路やブラックアイスバーン、一通りの冬道をナンカンは無難にこなしてくれました。
「冬もアジアンタイヤで大丈夫なんじゃないか?」
そんな心持ちになったというか、宗旨替えをしそうになったわけです──第一印象では。
YouTubeあたりでは「ナンカンは国産よりも効く」そんな話も多かったりします。でも、そこに両手を挙げた賛成はできない──という話は、次回に続きます。



著者紹介
淺川覚一朗
じつは旧「NAVI」当時から隅っこで描き続けている古株。「Moto NAVI」では「バリ伝」「ララバイ」のストーリーボードを書いたり、現在は書評「Moto Obi」を連載中。ライター稼業の一方で、北海道美唄市の「地域おこし協力隊」として業務委託を受け、同市の役場の人”として街おこしに取り組んだり、観光情報を発信中。