MOTORCYCLE

手のひらで楽しむカスタムバイクライフ

「プラモデルでカスタムバイクを作っている人がいる」と、
本誌関係者間で話題になっていたkota_scale_modelさんを直撃取材。
バイクに乗らずにバイクを楽しむという「たまバイ」生活をお楽しみあれ。

文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/三浦孝明

いそうでいなかったカスタムバイクモデラー

「この人、知ってる?」と、本誌の関係者界隈で話題になっていたモデラー、kota_scale_modelさん。InstagramやYouTubeなどに作品 の制作過程をアップするモデラーで、市販のプラモデルをベースに、独自のカスタムを施す、いわばバイクプラモ界のカスタムビルダーだ。
「本業は別にあって、プラモデルは趣味として2017年ごろ始めました。子供のころに作ったことはありましたが、ふと、“大人が本気を出したらどんなのが作れるんだろう”と思い、1年くらいかけてハーレーをちょっとずつ作ってみたのが始まりでした」。

東京都内にあるkotaさんのご自宅にある仕事部屋。その一角が制作スペースとなっており、整理整頓されたデスクには、照明器具や動画撮影用のスマホホルダーなどが並ぶ。

「1台作って満足し、もういいかなと思っていたんです。でもその後コロナ禍で仕事が減り、自宅にいる時間が増えたのを機にまた作り始めました。そのうち、せっかくなら人がどう評価してくれるか知りたくて2020年からSNSを始めました。それまでSNSなんてやったこともなかったし、未だにLINEすらやってないような人間なんですけどね(笑)」。

プラモデル作りもSNSも素人。そんなkotaさんもいまや、15万人を超えるフォロワー(ユーチューブ)を抱え、「銀の盾」(チャンネル登録者数 10万人超えのチャンネルに贈られる記念品)も手に入れた。

そんなkotaさんを知るには何より作品を見るのが近道。これまでに発表した作品の一部を紹介しよう。

実車と見紛う出来のドゥカティ1199パニガーレS(タミヤ)は、カウル類を取り払ってネイキッド化。ストリートファイター系らしいマッシブなフォルムに仕上がっている。kotaさんいわく、少年時代のプラモデルと比べると、キットそのものの精度が上がっていて、あまり手を加えなくてもいい出来なのだそう。実車でもカウルを外すようなカスタムをしたことがないので、SNSや海外のバイク関連のサイトを参考にカスタムの方向性を決めている。

バイクのプラモデルを作るたったひとつの理由

kotaさんが作るのは海外製のエンジン模型などもあるが、大半をバイクのプラモデルが占める。その理由はとてもシンプルなものだ。

「バイクは学生時代に乗り始め、30歳くらいまで乗ってました。ホンダ・スティードからGB400、それからクルマをはさんだあと、カワサキのバルカンを経て、いまは所有していません。
すぐにでもまた乗りたいものの、置き場所がないし、いまは自分だけの趣味にお金をかけるのが家族に申し訳なくて。現実的に考えると、復帰は子供が独立してからですね。
バイクのプラモデルを選んだのは、やっぱりバイクが好きだからです。クルマのも買ってみたんですけど、どうすればカッコよくなるかわからない。バイクがダントツ好きなんですよね。造形美はもちろん、移動手段としてもいい。再び乗るならとことんカスタムしたいので、いまはその気持ちをプラモデルにぶつけています」。

バイクが好き。その気持ちを満たすのは、乗ったり所有したりすることだけではない。机とネット上で楽しむバイクライフもまたオツなものに見えるが、これはこれで気苦労もある。

「SNSやユーチューブで発信していると、だんだん仕事のようになるし、更新を止めると応援してくれる方も去ってしまうんじゃないかという恐怖感はあります。一方でフォロワーから制作依頼が来ることもありますが、すべてお断りしてます。モデラーではないし、ほかの人の制作動画を見て勉強してるくらいなので。実はエアブラシすら持っていなくて、“写真マジック”な部分もある。もし販売したりすると、現物を見た人に怒られると思います(笑)。
当初は自分が乗りたいバイクを作ってきましたが、それだとつい自分好みの似たもの、似たカスタムになるので、最近はカスタムしたスタイルを念頭にモデルを選ぶようになりました。今後はクルマのプラモデルにも挑戦してみたい気持ちはありますが、まずはいままで通り、カスタムバイクを作り続けたいです」。

気になる作品制作の過程は、kota_scale_modelさんのYouTubeほか各SNSでチェック! 時間が溶けていく感覚に、きっと見たことを後悔するに違いない。