MOTORCYCLE

電気じかけのフェスティバル

2023年6月3日~4日に、ドイツ・ベルリンで開催された電動二輪車のイベント
「リロードランド」を、二輪ジャーナリストの河野正士がリポート。
国内はもちろん、海外でも多数のバイクイベントを見てきたからこそ感じた、
当イベントの特色とは。

text & photo_KOHNO TADASHI

コミュニティを形成し始めた欧州の電動二輪車シーン

なんとも懐かしい感じ。これが、ドイツ・ベルリンで行われた、欧州初の電動バイクのイベント
Reload Land /リロードランド」に参加した感想だ。
15年ほど前だったか、欧州でネオクラシックブームの火種ともいえるカスタムカルチャーが起こり、各地で小さなイベントが開催されはじめたのをインターネットで知った。それから数年後に彼の地に通い始めたわけだが、Reload Landで見た景色は、その頃に似ていたのだ。たとえ規模が小さくても、そこには電動二輪車の未来を信じている人々が集まり、信じた世界を共有している。二輪業界を巻き込んだネオクラシックブームの初期も、まさにそんな感じだったからだ。

もちろん、これまでEICMAなどで勢いを増す電動二輪ブランドを見てきた。さまざまなTech系ブランドが参加するCESに、新旧ブランドが集い、その技術や製品をアピールしているのも知っている。また2020年にフランクフルトモーターショーに代わってミュンヘンで開催されたA AMOBILITYでは、いくつもの新しい電動二輪モビリティが発表された。今年2023年は第二回IAAが開催されるが、そこでも新しい何かが発表されるだろう。

しかしそれらに出展したメーカーブースの先には、ユーザーではなく、投資家やメディアしか存在していないと感じてしまう。もちろん新しい事 業を前に進めて行くには、さまざまな人や企業の理解や協力を得なければならない。しかし、その煌びやかな舞台に立つ電動二輪の先に、それに乗り、生活するに人々の姿が思い浮かばないのだ。

その点で「Reload Land」は大きく違う。出展者は自ら、ユーザーと会話しながら試乗に出かける彼らを見送り、試乗後にまた会話する。出展ブランドの多くが、小規模なスタートアップであることから、ブランド創始者や開発者自身が、電動二輪車に興味を持つ一般ユーザーとコミュニケーションを取っているのだ。そして時間が空けば、他ブランドの車両を試乗し、情報交換も行っていた。

新たな可能性を感じながら二輪車を楽しむ

地に足が付いている。初夏のベルリンの爽やかな気候の元で、ビール片手に新しい人たちと新しいプロダクトに出会い、ただただ楽しい時間を過ごしたから、そんな風に感じてしまったのかもしれないが……しかし電動モビリティが社会に投下されたばかりで、さまざまな初期反応が出始めたばかりの日本越しに「ReloadLand」を見ると、早くもコミュニティ形成のフェーズに入っている欧州を、少し羨ましく思うことから、そんな風に感じたのだ。もちろん社会情勢が異なる欧州と日本を単純に比較するのは危険なのだが……。

あとひとつ、悲しかったのは、出展していたBMWモトラッドやENERGICA、ZORO MOTORCYCLEといった電動二輪車のビッグブランドからは、開発 陣たちが来場していなかったことだ。すでに電動二輪車を世界的に販売している彼らにとって、この小さなイベントはさほど興味が無いのかもしれないが……でもそうやって、カスタムシーンというパーティを、遠くから様子をうかがい、意を決して飛び込んできたときには、パーティは終盤に差し掛かっていて、結局は目的の定かで無いカスタムプロジェクトを進めるブランドを、これまで数多く見てきた身としては、また同じ轍を踏まないかと、早くもヒヤヒヤしている。

そんな話を出展者としていたときに、ひとりのエンジニアが言った言葉に、グッときた。この言葉が聞けただけでも、ベルリンまでやってきた甲斐があったと言っても良い。そのエンジニアはこう言った。「モーターとバッテリーという新しいパワーソースが登場したことで、我々はバイクのカタチを変えるチャンスを得たと思っている。バイクが誕生して約100年、そのカタチは大きく変わっていない。いや、エンジンを使う以上、変えられなかった。なのにいま現在の電動二輪車は、エンジンをモーターに変えただけ。それは非常に残念だ。だから我々は、新しいチャレンジをしたい。このチャンスを、逃したくないんだ」と。その彼の言葉を信じて、僕は来年も、初夏のベルリンを訪れるんだと思う。

この3人は、Reload Landの主催者であるマックス(中央)、レオ(右)、ジェームス(左)。マックスは会場となったバイク系DIYシェアガレージKraftwerk Berlin(クラフトウェルク・ベルリン)の創設者のひとり。エンジンバイク大好きな連中が、電動二輪車イベントをサポートしている。