MOTORCYCLE

ライダーを満たすために/
ハスクバーナ・モーターサイクルズ・スヴァルトピレン801

ハスクバーナ・モーターサイクルズのニューモデル、スヴァルトピレン801。
799ccパラツインエンジンを積んだデザインコンシャスなネイキッドに、
二輪ジャーナリストの河野正士が試乗した。

text_KOHNO TADASHI Photo_MARCO CAMPELLI, SEBAS ROMERO, KOHNO TADASHI

「日常からの脱出」に込められた真意

「Escape the Ordinary/日常からの脱出」。ハスクバーナ・モーターサイクルズ(以下ハスクバーナMC)の新型車「スヴァルトピレン801」のキャッチコピーである。正確には今年2024年4月から国内販売をスタートさせた新型車「スヴァルトピレン401/250」および「ヴィットピレン401」にも、そのキャッチコピーが採用されている。要するに、新しくなったハスクバーナMCのネイキッドカテゴリーの全てのモデルにこのコピーが使用されている。

まぁ日常からの脱出に似たキャッチコピーや、それを想起させるイメージビジュアルは、これまでもあらゆる場所で目に、耳にしてきた。バイクに乗ることは非日常であり、週末または通勤や通学でその非日常に浸れば日常も輝きを増すという、バイクをビタミン剤のように捉える手法だ。もちろん、コレには同意する。まぁ、多くの趣味は、その要素を内包しているものだ。でもハスクバーナMCが使うこの言葉の意味は、少し違うんじゃないか。フランス・マルセイユで行われた「スヴァルトピレン801」の国際試乗会に参加し、多様なワインディングでの試乗を終え、そう感じた。

要するに、日常から脱出するために、「日常=街中」から「非日常=郊外」まで、どちらの領域においてもライダーをサポートし(いや正確には、そのA to Bの2地点と言うより、A to Bに至るまでのグラデーションを含めたあらゆる領域で、と表現した方が良いかもしれない)、高い満足度を提供するために、エンジンもシャシーもデザインも磨き上げたのが「スヴァルトピレン801」である、と謳っているのである。

理屈と技術が、理想を実現する

それを実現する大きな要素が新型エンジンである。排気量799ccの並列2気筒DOHC4バルブエンジンは2つのバランサーを採用し、パラレルツインのイメージを覆すほど滑らかで扱いやすく、速い。75度位相クランクによる独自の不等間隔爆発にくわえ、2つのシリンダーを個別にモニターおよび制御してエンジン出力の最適化を図り、さらにはオプションを含めると4つのバリエーションを持つライディングモードや各種電子制御デバイスを搭載しそれらを駆使することで、あらゆる走行シーンに合わせてパフォーマンスをコントロールすることが出来る。

こう書くと、全てがコンピューターで管理された面白みに欠けるエンジンのように聞こえるかもしれない。しかしオプションのダイナミックパッケージによって追加されるダイナミックモードで感じた、過激な側に振れたこのエンジンの素性は痛快で、ケツを蹴飛ばされるようなハイパワーエンジンの加速感とはまったく異なる、マイナスGが効いたような、浮遊感を伴った強烈な加速を味わうことができる。

また前後サスペンションには調整機構が付いたWP製APEXショックユニットが採用されていて、それらを調整すればバリエーション豊かなエンジンキャラクターと車体の動きを連係させることができる。とくにフロントフォークは信号待ちなどのわずかな時間でも、グローブをしたまま伸側/圧側の減衰力を簡単に調整することができ、フロントフォークの特性を変えることができる。あえて調整範囲を5段階に限定し、その変化量を大きくすることで、各セッティングのキャラクター分けも明確にしているので、ツーリングや街乗り、スポーツライディングと走りのシチューションに合わせやすい。もちろんライダーの意志やエンジンの反応をしっかりとサスペンションに伝え、そのサスペンションから明確なフィードバックが得られる車体の反応は、「スヴァルトピレン801」が新たに採用した、エンジンをストレスメンバーとして使用する新型フレームによるところが大きい。要するに、エンジンやサスペンションやフレームと言った、バイクの中核であるメカニカルな部分がしっかりと造り込まれているからこそ、それにトッピングされる電子制御技術が活き、1台に多様なキャラクターが生まれるのである。「スヴァルトピレン801」は、そこがしっかりと造り込まれている。

「Escape the Ordinary/日常からの脱出」。それを実現するのは、現実逃避なんて突発的な行動ではなく、じつは理路整然とした理屈と泥臭い技術が必要なのである。「スヴァルトピレン801」は、そんなバイクなのである。

 

HUSQVARNA MOTORCYCLES SVARTPILEN 801


DETAILS

ヘッドライトおよびテールライト、ターンシグナルはLED製。ヘッドライトを取り囲むようにリングタイプのLEDポジションライトを配置。

 

フロントフォークはφ43mmのWP製APEX。リアはリンクを持たないモノショック構造でWP製APEXショックユニットを搭載。ブレーキシステムはスペインのブランド/J.Juan製。

 

コネクティビティ機能を持った5インチTFTディスプレイを搭載。そのディスプレイ画面上で各種電子制御デバイスを設定できる。

 

燃料タンクは14Lに拡大。それにともない左右に張り出した燃料タンクカバーもやや大きくなった。タンクカバーの後端にはタンクパッドが標準装備されている。

 

排気量799ccの並列2気筒DOHC4バルブエンジンは、全てのコンポーネントを含めても重量52kgと軽量。PASC(パワー・アシスト・スリッパー・クラッチ)も搭載する。

 

シート高820mmのライダーシートとタンデムシートは独立して配置。またそれらのシートを収めるシートカウルはアルミキャスティングで、シートレールと外装類を兼ねる。

 

701シリーズに採用された、特徴的なサイレンサーエンドキャップのデザインは継承。新しい排気ガス規制ユーロ5+をクリアしている。

HUSQVARNA MOTORCYCLES SVARTPILEN 801
●サイズ=全長――mm×全幅――mm×全高――mm ●ホイールベース=1475mm ●シート高=820mm ●タンク容量=約14L ●乾燥重量=約181kg ●エンジン=799cc水冷DOHC4バルブ並列2気筒 ●最高出力=105ps/9250rpm ● 最大トルク= 87Nm/8000rpm ●価格=1,389,000円

ハスクバーナ・モーターサイクルズ・スヴァルトピレン801 公式サイト
www.husqvarna-motorcycles.com/ja-jp/models/naked/svartpilen-801