MOTORCYCLE

スズキ 公道走行調査車両「e-PO」試乗会

モーターサイクルの世界でも少しずつではあるが進んでいる電動化
国産二輪メーカー各社がそれぞれのスタンスで電動化を進めていなか
スズキが昨年のジャパンモビリティショーで参考出品をしたモデルの
公道走行調査車両をメディア向けに試乗会を行なった

文と写真/安室淳一

SUZUKIが新たに手がける次世代モビリティ「e-PO」

その車両はペダルの付いたオートバイ、いわゆるモペッドタイプの車両で車名は「e-PO(イーポ)」。その名前はエポックメイキング(epoch-making:新時代をもたらす)ところから来ている。現状、開発段階ということで発売日等は未定だが、市販化は予定されているという。
そのコンセプトは「普段使いからレジャーまで、身近な移動をもっと自由に!」で、電動アシスト自転車とEV bikeを掛け合わせた新ジャンルの原付一種モデルとして発表、電動アシスト自転車の技術を取り入れて、そこまでの原付シーンにはない軽い車体を実現、電動アシスト自転車よりも強力なアシストとペダルをこがずにスムーズな走行を魅力とし、カーボンニュートラルの時代にスズキが提案する一台となっている。

会場となった、味の素スタジアムのミーティングルームで行われた説明会では、まず二輪営業・商品部チーフエンジニアの福井大介氏が「これからも原付一種が必要な人に向けてスズキは使い勝手が良く、生活に密着した乗り物かつカーボンニュートラルに対応する一手としてこの企画をスタートさせました。コロナ禍で働き方や通勤などにも変化があり、現在は徐々に生活は元の状態に戻りつつあるも、そもそも公共の交通機関での通勤については駅までが遠い人や職場までの直線距離は大したことはないが、公共の交通機関を使うと遠回りになってしまうことを悩ましく思っている人も多く、このモデルはそういった部分から解放されると同時に、好きなタイミングや好きな道を風を切って楽しく走るということでも活用する意味がある考えています」と語った。

続けて二輪パワートレイン技術部の技術企画課の神谷洋三氏が、e-POのパワートレインやアシスト等について「モーターはパナソニックサイクル製のモーターを使用、軽量で必要十分なものを使用していますが坂道などでの出力不足は否めず、そこは人の力を活用可能なペダルを装備することで原付一種としては十分な性能を確保しています。ちなみに最高速度は30km/h、航続距離は20kmです。一般的なアシスト自転車では人力1に対してモーターの力2となっていますが、e-poの場合は人力1に対して、モーターの力3と強力なものとしています。またアシストの切り替え操作は不要で、必要な時にペダルを漕ぐことでさらに力強さを発揮してくれます。さらにアシストも電動アシスト自転車は法規上、10km/hまでが人力1に対してモーター2のアシストをおこない、10km/h以降は徐々にアシストが弱くなっていき、24km/hではアシストがなくなります。しかしe-poの場合は10km/hを過ぎてもアシストが継続する仕様となっているので、フル電動での快適さやアシスト力の強さを体感できます」と説明してくれた。

全長1531mm、全幅550mm、全高990mmというコンパクトなボディは、バッテリーを含めて23kgという一般的な原付一種モデルと比べてはるかに軽く、女性でも扱いやすい車体を実現。さらに折りたたみ機構も搭載しているので、クルマにもスマートに積載できるのもポイントとなっている。ドライブユニットとバッテリーはパナソニックサイクルテック製のものを使用し、原付一種として車道を安心して走行できる性能(最高速度30km/h)と航続距離(約20km)を確保している。ちなみにバッテリーはパナソニックサイクルテック製のアシスト自転車であれば共用利用も可能となっている。そして走行モードは、ハンドルに搭載されたスロットルによってペダルを漕がなくても快適な走行を可能とした「フル電動走行モード」をはじめ、力強いモーターのアシストによって、ペダルを漕ぐ力は軽くても原付一種として十分な走行を可能とした「アシスト走行モード」、そしてバッテリー切れが心配な時でもペダルのみでの走行が可能な「ペダル走行モード」の3種類が用意されている。ただし、どのモードであっても原付一種という車両区分は変わらないので、歩道での走行は不可となっている。

実際に車両に跨ってみると実にコンパクト。フロント18インチ、リヤ20インチのタイヤを備え、カテゴリーとしてはミニベロスタイルで、車体自体も一般的な原付一種スクーターよりもはるかに軽く、電動アシスト自転車と同等で、さらにハンドリングもスムーズなので押し引き等の取り回しは楽々。またトップチューブも低めの位置となっているのでまたがりやすく、小柄な人や女性でも使い勝手は良さそうだ。まずは「アシスト走行モード」で走ってみた。確かにその走りは力強く、一般的な電動アシスト自転車のアシストよりもパワフルで軽いペダリングでもグングンと加速をしていき爽快感を感じられる。だがハンドルがクイック&小径タイヤなのでスピードの出し過ぎには注意したほうがよさそうだ。



次に「フル電動走行モード」を試してみた。出だしは電動バイクにありがちな「ドン!」という感じは少なく、スムーズ。スロットルを開け続けると徐々に加速をして、直線では30km/h強までメーターが読めた。原付一種なのでこの程度のスピードで十分に思え、もし急勾配で非力さを感じたときには、そのままペダリング(人力)でサポートすれば、電動アシスト自転車よりも力強く駆け上ってくれる。またストップ&ゴーの多い街中でもスムーズな発進は実に快適。そして電動バイク、電動アシスト自転車、そして自転車とモードによって3種類のモビリティの走りや使い方が味わえるのは一長一短はあるが魅力的に思え、原付一種モデルの代わりとしては十分な気がした。ただ電動モペッドが原付一種として世間に認識されていないことも問題になりそうなので、これを活用する人が肩身の狭い感じにならないよう、これらの解決も必要となってくるだろう。

【参考リリース】
原付一種の折り畳み電動モペッド「e-PO(イーポ)」