MOTORCYCLE

Motorcycle QuestionS(2019年10月号 No.102)

文/青木タカオ 写真/峯 竜也

快適で安全なライディングに、明るく爽快な視界は欠かせない。行く先がスッキリ見えれば、疲れにくく、走りの質も高まる。それを実現するのが、高性能なヘッドライトだ。リプレイス用として用意されるのが、LEDタイプ。配光設計を徹底追求した、こだわりの製品がある。

「ルーメンの値だけじゃないんですよ」インターネットや用品店でさまざまな製品が売られているLEDヘッドライトについて、スフィアライトで製品開発に携わる原宏彰さんは教えてくれた。

商品説明では、明るさを示す単位のひとつであるルーメンが競い合うようにして謳われている。この数値が高いほど、優れたものであると思う人は少なくないだろう。しかし、そうではないようだ。

「ヘッドライトはリフレクターの反射と組み合わされ、はじめて本来の性能を発揮します。配光設計が重要でして、そこをしっかりやらなければ照度の偏りやムラができ、明るさはおろか車検も通りません

家庭用電球など、複雑な配光を必要としないものであれば、“ルーメン数が高い=明るい”と認識しても間違いではないが、クルマやバイクのヘッドライトの場合は、ルーメン数より配光が肝心となってくる。LED ならではの鮮明な輝きと、完璧なまでの配光で、視界一杯にバラツキのない光をもたらすことを実現したのが「RIZING II」だ。2013 年に最初の製品を発売して以来、少しずつ改良を重ね、ついに17年、完成へと至った。原さんがヘッドライトの開発に携わるようになったキッカケは、自身が乗るヤマハSRのライトを明るくしようと、友人の会社にHID バルブを購入しに行ったことにはじまる。その会社こそが「RIZING Ⅱ」の発売元。ヘッドライトの奥深さに興味を持ったことで、原さんは作り手側となったのだった。

「HID バルブってなんぞや、って関心が尽きなくなってしまって、入社して研究を進めたらHIDはレンズやリフレクターを熱で傷めてしまうし、部品点数が多く、起動電圧も高くはね上がってしまうなど、バイクとの相性はあまり良くないかもしれないと考えたのです。そこでLEDに辿り着きました」

品質管理を徹底化するために中国から国内生産に切り替え、クルマ用で高い評価を得ると2015 年にバイク用「RIZING」を発売。現在は改良を重ねた「RIZING Ⅱ」と、原付・ミニバイク用の「LED NEOL」をリリースしている。多くの機種のノーマルヘッドライトはハロゲン式で、そのリフレクターにジャストフィットするようハロゲン球のフィラメントに近い発光を再現。熱を逃がすアルミ導管は、当初8㎜あったが2㎜にまで薄くし、LEDチップの配列も徹底追求した。また、ヒートシンクを放熱性に優れるアルミ削り出しで製作し、導風を促す冷却フィンを刻み、熱の問題を解消した。

「ネット販売されているものの中には、放熱を考えていない製品も多いことがわかっています。RIZING Ⅱのヒートシンクは究極と言えます」

原さんは自信を見せる。ヘッドライトボディの密閉度はさほど高くなく、走行中はヒートシンクに風が当たるよう設計した。計算され尽くした構造で、故障原因となりやすい埃づまりも抑制している。また、全国の用品店などで毎週末のように、取付無料キャンペーンをおこなって、適合車種を現車で確認したことも同社の強みとなっている。どの機種で装着しづらいかなどを実際の作業で把握し、最新版の開発に活かしたのだ。
製品化までに3 年を要したのが「LED NEOL」だ。原付やミニバイクの交流電源は不安定で、ハロゲンでも“ちらつき”が発生してしまう。原さんはこれも解消。AC/DC 兼用とし、バッテリーレスにも対応した。さらに、連続点灯5万時間の長寿命で球切れの心配を不要とし、消費電力はノーマルハロゲンの約半分にしてバッテリートラブルの解消にも繋げた。あらゆる振動をテストする自動車部品振動試験においては、二輪車載機器に求められる20Gまでの振動加速度試験に合格。タフな走りでも安心して使用できる耐振性も実現している。

そして一通りの話しを終えると「これも見てください」と、原さんは子どものように目を輝かせて試作品を次々と見せてくれるのであった。まずは、9月に発売予定の汎用シーケンシャルウィンカー。そして極めつけは、今秋の東京モーターショーで発表したいというブラインドスポットモニターだ。四輪車で採用が増えつつある、死角に車両がいる際に知らせてくれる運転支援システムで、ライセンスホルダー左右にレーダーを備え、ミラーにインジケーターを仕込んで点灯で危険を知らせる。シートも振動させるというから大掛かりだ。こんなふうに、原さんの製品開発はLEDヘッドライトにとどまらない。

「バイクに乗る人って趣味が多くて、いいものをつくらないと応えてもらえない。だからこそやり甲斐がありますし、次はどんなものをつくろうかって考えるとワクワクしてきます」

自らもライダーで、自分が欲しいと思う気持ちが開発の原動力。この人のつくるものなら試してみたい。話し終わる頃には、そう思えてならないのであった。

安全を体感する次世代の明るさ、スフィアライトRIZING Ⅱ formmotorcycleRIZING Ⅱ formmotorcycle。死角となりがちなハイビーム手前側をカバーするアシスト照射で、安全性を高めた。H4、HS1、H7、H9/H11、HB3/HB4用をラインナップし、カラーはホワイト、サンライト、ハロゲンを設定。税別価格9800 〜1万5800円となっている。取付確認車種はホームページで確認できる。

スフィアライト
営業企画室 主査 原 宏彰

「私たちがお届けするのは感動品質」という原さん。ノーマルハロゲンと変わらない全長で、様々な車体に取り付けを可能にし、正しい配光を実現したRIZING Ⅱを製品化。対向車や環境に配慮し、車検にも対応した。ライダーに喜ばれるモノをつくり続ける。