CAR

北のボ日記 #3「北海道のブリヂストン神話、そしてミシュラン」

どうにも安心できなかったナンカンのスタッドレスタイヤをあきらめて、
ミシュランにスイッチしたボルボS80は一路、流氷のオホーツクへ!
X-ICE SNOWで走るときの圧倒的な安心と、ちょっとした弱点とは?

文と写真/淺川覚一朗

――“安心”できなかったアジアンタイヤ、台湾のナンカンの次は、さてどうする?
ここ北海道は、ブリヂストン信仰、ブリザック神話がとにかく強く、同じ北海道に住む母のクルマ(W451スマート)も冬はBSを履いています。実際、BSのブレーキやハンドルの効きは良いわけですが、僕はその「ガッ!」「グッ!」といった極端なタッチが好きではありません。

これまで乗っていたBMW 316ti(E46/5)では、ハンドリングのスムーズさとドライ路面での安定でトーヨーを選んでいましたが、札幌のボルボディーラーが「ミシュラン推し」とのことなので、試してみたくなりました。でも、X-ICE SNOWって、不思議な名前ですよね(「どっちやねん!」という感じで)

さて、北海道の、それも地方の輸入車オーナーは、簡単なメンテナンスにも困ってしまうことがあります。それこそ母のスマートも、近所のガソリンスタンドではタイヤ交換さえ断られてしまうくらいです。そんな「地方あるある」の中、このS80の前オーナーが車検や持ち込み(!)のオイル交換などを依頼していたのが、我が街美唄の「松岡自動車」でした。中古車購入後のじつは大事なポイント、名義変更やETC車載器のセットアップなどもここで一緒に済ませておきます。

そして早速──オホーツク海まで流氷を見に行ってみました。

ここ美唄市から紋別市までは、道央自動車道、旭川紋別自動車道を経ておよそ220km、東名高速だと東京から静岡県磐田市くらいの距離です。

走り出してまず驚いたのが、とにかく静かなことでした(ナンカンが「うるさかった」ということですが)
そして、轍をものともしません! ナンカンは片輪を轍に乗り上げると「ボヨ~ン」とピンボールのように弾かれてしまったものが「ガリガリッ!」と轍に爪をたてて踏み越えていきます。あるいは、トンネルを抜けると雪が積もっていた! といった状況でも、前輪が雪にサクッ! と斬り込んで行き、挙動が乱れることもありません。制限速度で走っている高速道路なら、不意の路面変化でも穏やかな挙動でいなしていくのです。

ただ、そんなミシュランにも弱点がありました。オホーツクの道は雪が少なく、冷たい風が吹きわたっていることもあり、凍結や圧雪の交差点で止まる、スタートするときのABSやTCSの介入は、あきらかにナンカンより多く感じます。こと、アイスバーンなどのツルツルでフラットな路面での挙動に限っては、ナンカンの方が上でした。
しかし、例えば雪が降った何日か後の東京で、分厚い氷が残っているような状況(上画像:東京都練馬区)なら、轍同様にナンカンは不得意なはずです。
また、街乗りでのブレーキやアクセルの操作なら、ドライバーが自分で気を遣うことができます。でも、巡航スピードで吹き溜まりに突っ込んでいく、あるいは凍った轍が続いている、そうした状況ではタイヤそのものの性能に多くが委ねられます。ロングドライブで出くわす様々な路面状況への“安心”という点で、ミシュランは強く推せるスタッドレスタイヤでした。実際、四時間弱のドライブの後、チェックインしたホテルで靴を脱いだとき、靴下を濡らしている汗の量もこれまでとは違っていたのです。

ミシュランX-ICE SNOWは、冬でも何処にでも出かけるドライバーなら、雪だよりで関越を北上したくなるドライバーなら、頼りに思っていいタイヤです。



バックナンバーはこちら
北の“ボ”日記 #0「さようならBMW、こんにちはボルボ」

北のボ日記 #1「インチアップに耐えられなかったアジアンタイヤの話」

北のボ日記 #2「ブレーキだけでは測れないスタッドレスタイヤの“安心”」

著者紹介
淺川覚一朗
じつは旧「NAVI」当時から隅っこで描き続けている古株。「Moto NAVI」では「バリ伝」「ララバイ」のストーリーボードを書いたり、現在は書評「Moto Obi」を連載中。ライター稼業の一方で、北海道美唄市の「地域おこし協力隊」として業務委託を受け、同市の役場の人”として街おこしに取り組んだり、観光情報を発信中。