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2015.05.24

MOTORCYCLE MAN -オートバイのある人生- Vol.38 遠藤 智[モータースポーツジャーナリスト]後編

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インターネットの世界が仕事のペースを一変させた

 「仕事を始めた90年の頃は、原稿も手書き。海外からリザルトをファクスで送るのに、一枚2000円も3000円もかかる時代でしたね。数年後にパソコン通信が始まってワープロを使い始め、インターネット時代になってからは原稿や写真も送信が簡単になった。でも2005年くらいまでは、会場にファクシミリを持参していたんですよ。なぜかというと、その頃はリザルトがホームページにアップされるまでに時間がかかったから。プレスルームから直接送る方が早かったんですね」
 手書き原稿を送っていた頃は、取材ものんびりムードだった。しかし上田昇選手や坂田和人選手など、日本人ライダーが華々しい活躍を見せるようになった91年頃から、速報的な情報が求められるようになった。とは言え、インターネットの本格的な普及までは、レース終了後にライダーのモーターホームを訪ね、交流を深める時間が取れたそうだ。
 「バカ話をしたり、たまには酒を飲んで盛り上がったりね。だから記事のネタがいっぱいあったし、それが翌日の取材にも活きたんです。でもねぇ、インターネット時代になってからは時間に追われるばかり。正直、仕事がツラくなりました(笑)」
 現在のグランプリ取材は、スケジュールが非常にタイトだ。多少ゆっくりする時間が取れるのは、水曜と木曜の夜だけ。フリー走行が始まる金曜から、決勝日の日曜にかけては、朝イチから執筆、取材、執筆、取材の繰り返しとなる。新聞は早版から最終版まで、1日何度も版が変わるため、その度に原稿を差し替えていくからだ。しかもトーチュウの仕事が終わっても、メーカーのホームページ向けの原稿など、フリーランスとしての仕事が待っている。
 「新聞の仕事は毎日が放電で、充電が難しいんです。一人のライダーを3日間じっくり追いかける、なんて書き方ができればいいけど、実際はとにかく時間がない。今チェッカーを受けて、結果が出ました。文字量80行で! と言われたら、すぐに書き出さなきゃいけないんですよ」
 遠藤さんが、積極的に写真を撮るようになったのは、デジカメが普及してからだが、撮りたいものを撮ることが、充電になっていると語る。
 「今は、書きたい内容があればその写真を撮るし、撮った写真が書く題材になってる。文章も写真もやるのは大変だけど、自分の中では良い相乗効果を生んでいると思います」

h-4膨大な数のプレスパスは、世界中を飛び回っている証でもある。

あたえられた環境の中で頑張るライダーを応援したい

 これだけ長い間レースを見続けてきても、勝利の行方はなかなか予測がつかないという。しかし遠藤さんは、これは平さんの教えが大きいんだけど、と前置きしながら、「周りを不快にするライダーは強いチャンピオンになれない」と断言した。
 「強いチャンピオンは、周りに『コイツと一緒にやりたい』と思わせるし、全員を味方にするんだよね。現チャンピオンのマルケスには、そういう魅力があるし、バレンティーノなんて、その最たる例でしょうね」
 「レース=仕事」という認識が強く、ファン目線のようなドキドキを味わうことはないが、楽しいことはある。それは表には出さないけれど、応援するライダーが勝った時だ。
 「頑張ってるヤツが一番大好きなので、最近だと、富沢祥也くんとか好きでしたね。亡くなっちゃったけど、とにかく文句を言わなかった。僕は、バイクが遅い、チームがダメだと、文句ばかり言ってるライダーを見ると、『だったらお前が変えればいいじゃないか』と思うんです」
 テニスや自転車など、モータースポーツ以外にも、深い興味を持って取材したジャンルはいくつかある。しかし26年間、全戦の取材を続けているのは世界グランプリだけだ。
 「最近は、とにかく時間に追われて焦ってばかりだけど、やめたいと思ったことはないね。他にやれることもないし(笑)。ただ本気で、インターネット時代はどうにかならないかと思いますよ。昔と今を比べたら、圧倒的に昔の方が取材が面白かったもの。もうちょっと余裕を持って、レースを楽しみたいよね」
 そう言いつつも、現在のレースレギュレーションについて、ライダーのあるべき姿について、レースを語る熱い言葉は止まらない。いまや、レースの経過や結果がリアルタイムでネットに流れてくる時代。たとえ現場に行かなくても、レース記事を作成することさえ可能だ。それでも遠藤さんが、サーキットに足を運び続ける理由とは、何だろうか。
 「僕は沢木耕太郎さんのノンフィクションが好きなんですけど、彼の本に〝人間には3種類しかいない〞と書かれているんです。たしか〝『燃えつきることができる人間』と『そうでない人間』と『いつか燃えつきたいと願っているだけの人間』だ〞と続くんだけど。それを読んだ時、すごくいい言葉だと思ったんですね。この25年間、いろんな人に『自分もGPを観て回りたいけど、どうしたらできますか』って聞かれてきた。でも多分、本当に行きたい人間は、僕なんかに話を聞く前に、すでにGPを回ってるんですよ。僕は、泉優二さんの奥さんと初めて会った時に『あなたは本当にやりたいことを、絶対にやってきた人でしょう』と断言されたことがあるんです(笑)。今となっては、そうかもしれないなって自分でも思いますね」

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遠藤 智/SATOSHI ENDO
1957年北海道生まれ。19歳でシンガーソングライターを目指してZⅡと共に上京。21歳の時にロードレースを始め、鈴鹿4時間耐久レース優勝、鈴鹿8耐や海外レースを経験すると同時に、平忠彦氏のメカニックを務めた。その後バイク雑誌の編集者を経て、90年から世界グランプリを転戦。現在も、日本人で唯一シリーズ全戦を追いかけるジャーナリスト兼フォトグラファーとして活躍している。

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