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2015.09.22

1人で革ジャンを縫い上げる、それがなによりも楽しかった

MOTORCYCLE MAN -オートバイのある人生- Vol.40 深野正孝[カドヤ会長]後編

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たとえ効率が悪くても品質の追求はゆずれない

 2002年に始まった「純国産」を掲げるフラッグシップ・プロダクト、『HEAD FACTORY』も、カドヤの品質へのこだわりから誕生したものだ。本社工場での一貫生産と厳しい品質管理により、フルオーダーに匹敵するクオリティを、既製品モデルでも提供する試みは、工場長を筆頭に、若手スタッフが中心となってスタートさせた。本社工場(ヘッドファクトリー)の名を冠する取り組みが目指したものとは何か。その問いには、3代目社長の深野将和さんが答えてくれた。
 「海外生産モデルがどんどん増えていく中で、日本製にこだわり、自分たちのモノづくりへの情熱を、時間をかけて形に残そうとして産まれたのが、ヘッドファクトリーです。会長が口酸っぱく言い続けたことですが、カドヤはずっともの作りと、人
作りを大切にしてきました。それは、お客さんが使う物をしっかり作る技術と人材を育てないと、そのツケは結局自分たちに返ってくるからです。お客さんがより安心して、長く着られる製品を作ること。それがブランドとして目指すことですね」
 ヘッドファクトリーで使用するのは、専門のタンナーが独自に開発した専用の革。しかも革の表情を読みながら、使用する部位にもっとも適した部分を選んでパターン(型紙)を落とし込んでいくため、革の使用量がどうしても多くなってしまう。しかしこの時間的にも、革の使い方としても厳格な製法こそが、ハイクオリティな製品を生み出すのだ。
 傷や汚れが生じたり、流行りに合わなくなれば捨てられる通常の洋服と違い、革ジャンは10年、20年という長期の使用に耐える。きちんとした手入れや修理を行えば、40年、50年と使い続けることも難しくない。他の衣料素材にはない耐久性も、革の魅力だと正孝さんは語る。
 「しかも着続けるうちに、すごく自分の体に馴染むんだよね。肘の曲がり方や肩の形、そういう一人ずつ違う体の作りに、革は寄り添ってくれる。だから革のジャンパーは、みんなが長く着たり、いつまでも手元に置いておきたくなるんだろうね。」

kadoya_04カドヤの皮ジャンを生み出す職人たちの卓越した技術。その高品質な作りに魅了される芸能人・著名人も数多く、右下は写真家の加納典明氏が約40年前にフルオーダーしたジャケット。

つくる側もつかう側もレザーに惚れ込んでいる

 現在、カドヤの本社工場には、20代の若手から70代のベテランまで、幅広い世代の職人が在籍している。興味深いことに、その多くはカドヤの製品に惚れ込み、自ら「カドヤで革ジャンを作りたい」と飛び込みで門戸を叩いた人だという。また「革ジャンづくりの現場が見たい」と、工場見学のために東京本社を訪れる熱心な顧客も少なくないそうだ。
 「カドヤなら、縫製にしても革にしても信頼できる。そう言ってくれるだけじゃなく、商品が作られる背景にまで惚れ込んで、興味を持ってくれるお客さんが多いんだよね。小物にしろ服にしろ、革にはそういう魅力があるのかもしれない。うちの職人たちだって、みんな自分の仕事に惚れ込んでるもん。俺も人生の中で一番楽しかったのは、ジャンパーを縫っている時だったと断言できるよ。今も夢に見る。一着が出来上がるまでって、本当に楽しいんだ」
 カドヤで働く人は誰もが、レザーウェアを製作し、販売する自分たちの仕事に誇りを持っている。ただ商品を売るだけではなく、リペアやカスタムにも力を入れ、近年は専用工場を設立し、革ジャンのクリーニング「リフレザー」の事業に取り組んでいるのも、せっかくの革ジャンとの出会いを、ユーザーに最後まで楽しんで欲しいと願うからだ。
 「それだけの魅力が革ジャンにはあるからね。これからはもっと、フルオーダーを作る人が増えてくれたらいいな、と思うよ。色合いや裏地を選んだり、デザインを自分で考えるのもいいじゃない。うちには既製品もあるけど、一着は自分だけのオーダーを作って、その良さを味わってくれたら、さらに違った革の楽しみ方ができるんと思う。本社工場には新しい機械も導入したし、どんな要望にも応えられる、超一流のパタンナーさんと職人さんがいるからね」
 あと今後のカドヤに望むのは、社長が会社をぶっつぶさずに続けてくれることかな。そう言って正孝さんが大きく笑うと、すかさず将和さんも笑顔を見せて、後を続けた。
 「カドヤの伝統を受け継ぐプレッシャーは、僕自身は意外と感じてないんですよ(笑)。自分が子供の頃から見てきた商売だし、何より大好きなバイクに携わるウェアを作れることが嬉しくて。ただ、オーダーにしろ、既製品にしろ、何をしたらお客さんに一番喜んでもらえるか、どういう製品を作ればカドヤを選んでもらえるのか。それを考えるのは確かに苦労します。でも、もの作りに対する軸がブレずにあるから、大変だけど楽しみでもあるんです」
 革への情熱と、伝統に裏付けされた技術を武器に、カドヤはこれからも、ユーザーのニーズを具現化した魅力的なウェアを作り続けていく。

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深野正孝/Masataka Fukano
1942年東京都生まれ。1975年にカドヤ社長に就任してからは事業内容をオートバイ分野に特化、拡大。バイク用レザーウェアのパイオニアブランドとして、さまざまな人気モデルを誕生させた。10代から服づくりを学び、自らも職人として長く活躍。プライベートで乗り継いだバイクの経験を、製品づくりに活かしていた。近年は店頭に立つ機会も多く、その気さく人柄を慕う顧客は数多い。

文/齋藤春子 写真/峯 竜也

→MOTORCYCLE MAN -オートバイのある人生- Vol.40 深野正孝[カドヤ会長]前編

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