MOTORCYCLE

250cc、4気筒。カワサキZX-25R、いよいよ発売!

時が来た。ついに来た。もう2度と現れないと思っていた250ccの4気筒モデルが戻ってきた。
名にし負う「ニンジャ」という名に恥じない輝きは、期待するなと言うほうがムリというものだ。
待ちわびたニューモデルを、二輪ジャーナリストの青木タカオがインプレッション!
※Moto NAVI 2020年10月号に掲載された記事を再編集しています。

text_青木タカオ photo_高嶋秀吉、川崎重工業、カワサキモータースジャパン

31年前のインパクトがいま再び250ccクラスに蘇る

ニューモデルが登場する度に、最初の試乗はとても楽しみで興奮を伴うものだが、これほど待ち焦がれ、そして乗った時の感動が大きかったモデルは近年記憶にない。
19年秋の東京モーターショーで発表され、いよいよ2020年9月10日に発売するカワサキNinja ZX-25Rだ。250ccの4気筒モデルは、08年に生産終了したバリオスII以来で、生産コストがかかることから「もう二度と、どこのメーカーからも出てこないかもしれない」などとも囁かれた。
それだけに感慨ひとしお。セルスターターを回し、4発サウンドを耳にした時から昂ぶった感情は、もう抑えきれない。スロットルをワイドオープンすれば、レブリミッターの効く18000rpmまで淀みなく回って、新作エンジンが雄叫びをあげている。それでもデジタルスピードメーターは、まだ平穏な数値を示したまま。公道でもアクセルを全開にできるこの歓び……。あぁ、なんて気持ちいいことか!

レーサーレプリカブーム末期に差し掛かった1989年。250ccクラスにも直4モデルを拡充させていくスズキ、ヤマハ、ホンダらに遅れ、カワサキはZXR250を市場に投入した。最後発とあって、先がけてラムエアシステムやクラス初の倒立フォークを採用するなど起死回生の意欲作となったが、あれから31年、今度はカワサキが他社に先制攻撃を仕掛けるカタチとなったのだから興味は尽きない。ZX-25Rが、この先のバイク史で語られることは間違いないだろう。
一時は勢いをなくし、レーサーレプリカブームの頃の高性能ぶりを知る者にとっては、物足りなさを感じた昨今の250ccスポーツ(一部を除く)だが、ZX-25Rは妥協を知らない。ラムエアシステムとダウンドラフト吸気を採用し、インジェクターとスロットルバルブをECUでコントロール。クラス初となるトラクションコントロールやオートブリッパー付きクイックシフター(SEモデル)など、電子制御も満載にした。

注目の完全新作エンジンは、ボア・ストロークを50×31.8mmとし、49x33.1mm だったZXR250よりショートストローク設計としているから驚く。最高出力は同じ45PSだが、ラムエア加圧時は46PSを発揮。言うまでもなく現行ナンバー1だ。
骨格も完全新設計。高張力鋼製軽量トレリスフレームからなり、異なる径と厚さを持つパイプと、モナカ形状のスイングアームピボットセクションの組み合わせで構成された。
重心やピボット、エンジン軸の位置をはじめ、キャスター角などシャーシの主要寸法は、スーパーバイク世界選手権に参戦するNinja ZX-10RRの設計思想からフィードバックされ、ホリゾンタルバックリンクリアサスペンションのライバル出現が先かネイキッド版Zの噂が出るか!?レイアウトもZX-10R譲りとしている。ZXR250の衝撃再び……、決して過言ではない。

ライバル出現が先か、ネイキッド版Zの噂が出るか!?

またがってすぐ感じるのは、車体のスリムさとフィッティングの良さ。2気筒モデルのNinja250より、横幅がだいぶ増すだろうと想像していたが、カタログスペックでは全幅710→750mmと、わずかに40mm増だけに抑えた。開発陣のライトウェイトスポーツへのこだわり、執念を感じずにはいられない。
これは、ダウンドラフト吸気の採用や、バルブ挟み角を28度に立てたパワーユニットのコンパクト設計によるところが大きい。フューエルタンクは15Lの容量を確保しつつ絞り込む形状で、マシンとの良好な一体感を生み出している。シート高は795→785mmに下がり、足つき性はさらに良好。車両重量は166→183kg(SE=184kg)となった。

1日たっぷり乗り込み、舌を巻いたのは、なんと言っても4発ならではの高回転での伸び。ラムエアシステムとダウンドラフトインテークが吸気効率を向上させ、異なる長さにしたインテークファンネルがフラットなトルク曲線とスムーズなパワーデリバリーを実現。吸気ポートの出口は2段階に加工され、1段目はバルブシートに沿って、2段目はポート傾斜角度に沿い、燃焼室に入る混合気の流れを直線化している。
幅広なポート設計で空気量を増量し、流れをスムーズにするのはZX-10R譲りで、シリンダー内壁にメッキ処理を施し、フリクションを低減するアルミダイキャストシリンダーなどもまた10Rや6Rと同様。兄貴分たちの技術が惜しみなく注ぎ込まれている。
サーキットスピードでも充分な制動力を発揮し、コントロール性も申し分ないブレーキは、フロントにラジアルマウントモノブロック対向4ピストンキャリパー&310mmセミフローティングディスクを採用。ダブルディスクにしなかったのは、「シングル仕様の方がバネ下を軽くでき、ハンドリングがシャープになるから」と、開発スタッフが教えてくれた。たしかに切り返しもクイックで、身のこなしが軽い。クォーターらしい軽快感がある。
また、キャブレター時代の250cc4気筒モデルというと、タイトコーナー旋回中などアクセルを開けるのを我慢しなかればならないところ、つまりパーシャル状態付近でギクシャクしがちだったが、ZX-25Rでは電子制御スロットルとインジェクションの採用でスムーズなパワーデリバリーを実現。アクセル開度1/8以下といった繊細な状況でも、ライダーの意図した通りの駆動力を発揮してくれ、全域コントローラブルで扱いやすかったことも報告しておこう。

上級仕様「SE」は、アップ/ダウン両対応のクイックシフター、USB電源ソケット、スモークウインドシールド、フレームスライダー、ホイールリムテープを標準装備する。クイックシフターはオートブリッパー付きで、クラッチ操作不要のままギヤチェンジできるだけでなく、自動でアクセルを煽ってスリッパークラッチとの組み合わせでシフトダウン時のショックを減らす。雨の中も走ったが、スリッピーな路面でも不安なくシフトダウンでき、疲労を大幅に軽減してくれるのだ。
3つのモードが選べるトラクションコントロールも介入レベルが絶妙で、レイン走行時にも大いに役立つ。開発ライダーによると、「モード1はサーキット用で、かなり攻めたセッティング。モード2がスポーツ走行時、通常はモード3がオススメで、介入が早すぎることはない。3段階すべて“使える”味付けにした」と自信を見せる。
一般道でも高回転域を目一杯に使え、4気筒ならではの官能的サウンドとエンジンフィールを味わい尽くせるZX-25R。予約殺到中で納車待ち必至と聞くから、今さらもうここでその魅力を語る必要はないのかもしれない。対抗馬出現が先か、ネイキッド版の噂が先か……、楽しみは尽きない。

カワサキ ニンジャ ZX-25R Spec.

●サイズ=全長1980mm×全幅750mm×全高1110mm ●ホイールベース=1380mm ●シート高=785mm ●タイヤ=前110/70R17M/C 54H、後150/60R17M/C 66H ●タンク容量=15.0L ●車重=184kg(183kg) ●エンジン=249cc水 冷4ストローク並列4気筒 ●最高出力=45ps/15500rpm〈ラムエア加圧時:46ps/15500rpm〉 ●最大トルク=2.1kgf・m/13000rpm ●価格 ¥913,000(¥825,000)
※スペックはニンジャZX-25R SE KRT EDITIONおよびSEのもの。カッコ内のスペックはZX-25Rのもの

カワサキNinjaZX-25R 公式サイト
www.kawasaki-motors.com/mc/lineup/ninjazx-25r