MOTORCYCLE

いまイチバンストリートなバイクはKTM 890 DUKEだ!

2018年に販売を開始したKTM初のパラツインエンジンが進化した?
スペックも気になるところだが、そのフィーリングはどう変わったのか?
ジャーナリスト青木タカオが試乗インプレッション!

文/青木タカオ 写真/安井宏充

そのままブッチギレ! 興奮し、テレビの前で思わず叫んでしまった。MotoGP第4戦チェコGP、KTMのホーム2連戦を前に、なんとルーキーのブラッド・ビンダーが、KTMのMotoGPクラス初優勝を成し遂げた。2017年から参戦し、4年目の快挙だ!!

その走りはじつにアグレッシブで、軽やか。KTMは鋼管トラスフレームと自社グループ内で製造したWPサスペンションを採用し、アルミ製ツインスパーフレームとオーリンズ製フォークを唯一使用していない。その独創的なマシン設計は、我々が手に入れることができる市販モデルにも受け継がれる。コンセプトは一貫して“Ready to Race”。自在にコントロールできる秀逸な操作性で、サーキットやワインディングが何よりも大好物。新登場の890DUKE Rもまたその通りだ。先代790DUKEの水冷DOHC4バルブ並列2気筒エンジンをボア×ストロークともに拡大し、排気量を799→890cc化。ヘッドやカムシャフトを刷新し、吸排気バルブも大径に。最高出力105→121ps、最大トルク87→99Nmと大幅に向上しつつ、車両重量を3kg軽減し、171kgとしている。ライディングポジションは790よりもやや腰高な印象で、「サーキットでアグレッシブな走りを」と言わんばかり。シート高は9mm上がって834mmとなったが、900ccクラスとは思えないコンパクトでスリムな車体で取り回しは苦にならない。

どこからでもパワーがみなぎり、全域で力強く鋭いスロットルレスポンスを実現。太いトルク4000rpmからレブリミッターの効く9500r pmまで広い範囲で発揮し、スムーズな吹け上がりとともにグイグイ車体を押し出すヒット感が味わえる。クランクシャフトとフライホイールを重くし、低中回転域のトルクがより潤沢になっていることも見逃せない。試乗はサーキットと一般道の両方でおこなったが、ゆったり走っても鼓動感が乗り手に伝わり、ワインディングを駆け抜けるのも爽快。ペースを落としても低中回転域でギクシャクせず、扱いやすさも持ち合わせ懐が深い。ハンドリングは相変わらずシャープで軽快、コーナーでは狙ったラインを外さないが、落ち着きも伴って安心感が持てる。

電子制御もさらなる進化を果たし、5→6軸となったIMUがコーナーリングABSやトラクションコントロールをより緻密に制御。ライドモードはS P O R T、S T R E E T、R A I N、TRACKがデフォルトで設定されている他、9段階のトラクションコントロールやアンチウイリーモードのON / OFFなどをそれぞれ好みで調整できる。スロットルレスポンスがもっとも鋭いTRACKでスムーズにスポーツ走行するなら、アンチウイリーモードは欠かせない。ONのままでも、ガバ開ける度に前輪が少し浮いていくほどで、OFFならコーナーの立ち上がりで簡単にフロントがグイッと上がり、エンジンがいかに強力かわかる。しっかりとダンピングの効いた前後サスペンションはストローク感もあって路面追従性に優れ、よく動いて神経質さがない。接地感がはっきりとあるミシュランPOWER CUP2も走りに余裕をもたらしてくれ、深く車体をバンクさせても車体は安定しきっていて、旋回中にラインを変えることも許容してくれるから無理も効く。アップ/ダウン対応のクイックシフターも備わり、ストレスなくスポーツライディングを満喫できた。

強烈に刺激的だが、フレンドリーな一面も共存し、長く付き合った相棒と走るときのようにピタッと息が合う。無論、次元は遥かに違うが、ブルノサーキットで表彰台の真ん中に立ったビンダーもKTMならではの優れたコントロール性を存分に味わい、さぞかし気持ちよかったことだろう。

KTM 890デュークR SPEC
●ホイールベース=1482mm●シート高=834mm●タイヤ=前120/70 ZR17、 後180/55 ZR17●タンク容量=14ℓ●車両重量=174kg●エンジン= 8 8 9 cc水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒● 最高出力= 121ps/9250rpm●最大トルク10kgf/7750rpm●価格¥1,465,000