MOTORCYCLE

R18のロックンロール!【BMW R18 レビュー】

BMWがリリースしたボクサーツインのクルーザー、R18(アールエイティーン)。
絶対王者ハーレーが君臨するクルーザーカテゴリーに、
BMWが真正面から向き合った一台は果たしてどんなマシンなのか?

文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/安井宏充(Weekend.)

いきなりだが、BMW R18は何にも増してまず存在感がある。にぎやかな夜の街に停めていると、まばゆいネオンをまるでアクセサリーのように身にまとい、自らの存在感をさらにアピールするように輝く。その姿はもうバイクのそれではなく、ある種の芸術品、気の利いたオブジェのように見える。それはやがて光を集めたまま夜に溶け込んでいきそうなほど艶やかで、本当に見ているだけで飽きない。いいバイクは乗らなくてもわかる、とまでは言わないけれど、佇まいに心動かされるバイクと出会えたら、すぐに自分のものにするといい。美人は3日で飽きる? そんなことはない。ビジュアルが好きなら、おはようからおやすみまでずっと僕たちは愛し続けられる。

……と、のっけからなんだかよくわからないことを書いてしまったが、一方でR18そのものはとてもわかりやすいバイクである。市販されるまでの流れやその成り立ち、エンジンについてなどなどの話は手元のスマホか目の前のPCでググってもらったほうが早いし、僕よりもちゃんと説明できるライダーがゴマンといるので、ここでは触れないでおく。

話を戻そう。R18のわかりやすい点。それは、どのバイクを仮想敵として考えているかだ。(すごく雑だけど)その大まかなイメージや価格を見るに、ライバル=ハーレーのソフテイルファミリーであることは一目瞭然だろう。もちろん、Moto NAVIをはじめとするバイク雑誌読者であれば、BMWとハーレー、ボクサーツインとVツインを直接比べることの愚かさを知っているが、ライダーがみなそうではない。R18もホンダのレブルカワサキのバルカンもみんな、「ハーレーみたいなバイク」という認識のライダーはなかなかどうして多いのである。

アホみたいな言い回しになってしまうが、そんな「BMW版ハーレー」とも言えるR18は、新開発の1800ccボクサーツインエンジンを搭載したBMW久々のクルーザーモデル。100年近くボクサーツインを作り続けた同社の歴史のなかでも最大排気量とのことだが、その出来は同型エンジンにとってある種の到達点と言っても過言ではない。

2000rpmのあたりで、最大トルクの16.1kgf・mの9割以上にあたる大トルクを発揮し、その余裕ある走りはいかにもクルーザーといったもの。それでもBMWとしてのスポーツマインドも軸として確かに存在するので、重量級の車体がアスファルトの上を大パワーを以って滑走するように走る。まさにチカラこそパワーといった感じのときめく走りで胸がすく思いだ。爆発感という意味ではハーレーのVツインほど弾けていないが、右手をジェントルに操れば、BMWのKシリーズのように従順なのにダイナミックという相反する反応を返してくれる。

また、走りの面で忘れてはならないのが、各ライディングモードだ。それ自体はいまどきのバイクなら珍しくもないが、スポーツ色の強いほうから順に、「ROCK」「ROLL」「RAIN」と名付けが独特なうえ、鈍感力が高いライダーであってもさすがに気づくであろう明確な違いがそこにはある。メーターはアナログだが、その中にあるディスプレイにはギアポジションインジケーターが採用されており、ギアがニュートラル時にROCKからROLLに切り替えると、「ROCK[N]」→「ROLL[N]」となり、天国の内田裕也もびっくりの演出に思わず、ロックンロールとつぶやいてしまうに違いない。シェケナベイベー。各所に「BERLIN BUILT」の文字が入り、お硬い印象すらあるBMWにもかかわらず、ここだけこっそり遊び心満載。このギャップでR18に惚れる。そんな恋の始まりがあってもいいと思う。

では改めてエクステリアについても見ていこう。試乗車はデビューを記念したファーストエディションと名付けられた特別仕様車で、ピアノのような光沢があるブラックの塗装に、ブリンブリンのクロームメッキを組み合わせている。ガソリンタンクやリアフェンダーには、ホワイトのピンストライプが入ることで確かな存在感を演出しながらも、ぐっと一回り引き締まったかのような印象を見るものに与える。

乗車中ずっと目にすることになるハンドルバーやマスターシリンダーなどのコックピットまわりはもちろん、何よりも主張が強いバルブカバーやインテークマニフォールドカバーもしっかり加飾。自分は特別な一台に乗っている、という所有感をこれでもかと満たしてくる。ただし、素のモデルとの価格差が40万円以上(ファーストエディション:2,976,500円〜、通常モデル:2,547,000円〜)あるので、欲と懐事情の双方としっかり相談、吟味したいところではある。素の仕様がかもしだす落ち着いた雰囲気は、最終的にやっぱりこっちだったよね、なんて言いたくなりそうなピュアなものなので、老婆心ながら申し添えた次第です。僕と同じように、同じくBMWのヘリテイジモデル、R9TならPUREがいちばん好みだというピュアっピュアなライダーなら、R18においてもファーストエディションではなく、素のモデルを選ぶと後悔しないはずだ。

どうしてもクルーザー市場においては、ハーレーダビッドソンという絶対的なブランドが存在するため、ライバル(を目指すものたち)は、その模倣――Vツインエンジンを搭載した大型バイクで立ち向かわざるを得なかった時代が長かった。しかし、R18やレブルのように、異なるアプローチで勝負するメーカーが増えてくれば、カテゴリー全体がもっと活性化するはずだ(エリミネーター、復活しないかな)。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、クルーザーに自由を与えることは、ライダーにより大きな自由がもたらされることになる。それってすごくロックなことじゃないか。

SPECIFICATION
●サイズ=全長2465mm×全幅950mm×全高1130mm(ミラー除く) ●ホイールベース=1725mm ●シート高=690mm ●タイヤ=前120/70 R19、後180/65 B16 ●タンク容量=16ℓ ●車両重量=345kg ●エンジン=1802cc 空油冷2気筒4ストロークボクサーエンジン ●最高出力=91PS/4750rpm ●最大トルク=16.1kgf・m/3000rpm ●価格=2,976,500円(ファーストエディション) ※通常モデルは2,547,000円