日本でいちばん「気持ちいい」を知る男、しみけん
AV男優のしみけんは、何台クルマを所有しようが、
この19年間ずっと愛車のアディバAD150で撮影スタジオを巡り続けている。
何が彼をそうさせるのか? そしてしみけんにとっての気持ちいいとは何か?
トップ男優が語る、バイクと愛。
文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/高柳 健
バイクがあれば、路線図と時刻表に縛られずに済む
日々、何人もの女優が入れ代わり立ち代わりデビューしては引退していくアダルトビデオ業界において、20 年以上にわたり、第一線で活躍し続けている男、しみけん。人気男優として数多くの作品に出演するしみけんさんは、無類のクルマ好きとしても知られている。過去にはベンツのEクラスやVクラス、フォード・マスタングコンバーチブルにローバー75 、デロリアンDMC-12などのほか、アウディR8に至ってはスパイダーなど仕様違いで3台所有してきた。
これだけクルマを乗り継いだと聞くと、さぞかしうわついたバイク歴なのかと思うが、バイクだけは19年前に購入した屋根付きスクーター、アディバAD150に乗り続けている。「クルマは好きだけど、バイク好きではありません。ただ、自分のバイクが好きなだけなんです」
18歳で上京。だが、時刻表や路線図に縛られる生活がイヤでスズキのレッツを購入。その後ホンダのフォルツァに乗り換えたものの、雨の日の移動に頭を悩ませていた。
そんなある日、通りがかったショップでAD150を見かけたしみけんさん。”出会って4秒で購入”した。
「輸入車なんで取り寄せてもらって、後日、納車された車両に乗って店を出たら150m走ったところでエンジンが止まって動かなくなっちゃって。店に戻って見てもらったら、輸送中に横倒しにして船に積まれてたから、オイルが変なところに回っちゃってるね、と。“これが輸入車と付き合うということなんだ”とそのとき初めて学びましたね( 笑)」
人生の相棒として乗り物が好き
それから19 年。AD150はエンジン以外ほぼ全てのパーツを交換。今後はエンジンの載せ替えも検討中だ。
「買い替えたほうが安いに決まってるんですけど、サイズ感も速さも僕にちょうどいいんです。知り合いに“まだこれ乗ってるの?” って言われるのがむしろいい。駆け出しのころから乗ってるんで、下積みからいまに至るまでをずっと支えてきてくれた相棒なんですよね」
しみけんさんはときどき下ネタを交えながら、豊かな表情で乗り物、特にエンジンに対する愛を語る。
「R8でエンジンの魅力に取り憑かれ、重機や耕運機にも興味を持つようになりました。生き物じゃないのに心臓を動かすように動いてる。それがいい。機械に詳しくないし、マニュアルのバイクに乗ってるわけでもないから、バイク好きなんて言ったらおこがましいですけど、人生の相棒として乗り物が好きなんです」
同じことをしても気持ちよさは全然違う
そんなしみけんさんの考える“気持ちがいい”を問うてみた。
「都内のある通りは高い建物がないので空がよく見えるんですが、そこを足を広げてのけぞるように走るとすごく気持ちいい。あの空を飛んでるような爽快さはオープンカーでも得られない。また、雨の日に目的地へ着いたときの達成感。あれもいい。結局、気持ちよさとは? みたいな問いって、脳内物質が~という話になっちゃうけど、同じ行為でも、仕事とプライベートでは気持ちよさが全然違うんです。仕事だとアングルや流れを意識するけど、プライベートなら気にしなくていいし、愛がある。やっぱりそれは全然違う」
当の本人はバイク好きではなく、あくまでAD150が好きなだけだと謙遜するが、その知識やデータ収集能力には目を見張るものがあった。
「そう言われると本当にうれしいですよ。初めてバイク雑誌に取材されて、僕も晴れてバイク雑誌童貞を卒業することができましたから」
……この男、どこまでもプロである。
元は青いボディだが、同色のカウルがどうしても出てこず、仕方なくネットオークションで手に入れた赤いジャンク車から移植。開閉式の屋根は二輪のカブリオレみたいなものだと笑うしみけんさん。乗り続ける理由はズバリ、愛着とかわいさとのこと。
ADIVA AD150
ベネリ・アディバが2001年~ 06年にかけて販売していた、開閉式ルーフを備えたスクーター。同一のボディで125 ccと150ccモデルが存在しており、天候を選ばないシティコミューターとして愛された。
SHIMIKEN
1979年、千葉県生まれ。18歳からAV男優として活動。年間およそ500作品に出演し、これまでの出演作品は1万本を超えるトップ男優。著述業のほか、近年はユーチューバーとして、「公式しみけんチャンネル 男女の仲研究所」を運営するなど活躍の場を広げている。