MOTORCYCLE

40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #10

ヤマハXS-1をレストアしてレース参戦を目論む
元モトナビ編集部員で、現イタリアンシェフのトミヤマ。
いよいよマフラー製作までこぎつけたけれど……

文/冨山晶行(トラットリア築地トミーナ) 写真/後藤 武、冨山晶行 アドバイザー/後藤 武 協力/ Keep’s SUPER CRAFT、POWER PIPE、筑波サーキット

POWERPIPEにてマフラー製作をお願いセヨ!

※前回までの流れはこちらでチェック
40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #9

旨い魚の話で盛り上がること2時間ほどで茨城から厚木に到着。料理人のトミヤマが感心するほど釣り人ゴトーさんの知見が深く、話がオモロいので2時間などあっという間。さて、パワーパイプさんである。

天井から無数のチャンバーがぶら下がから、高橋さんが出迎えてくれた。XS-1をさっそく見ていただくと、「集合(マフラー)でいいですね」というので、ビックリ。ゴトーさんからは、チャンバーしか頼んだことがないので集合とか無茶いうなよ、と言われていて、勝手にストレート2本出しだと思い込んでたのだ。
「ただし、いわゆる普通のマフラーみたいにパイプを曲げるわけじゃないんです」。

へ?

「鉄板をパイプ状に丸めて溶接し、水圧で膨らませて形にするんです」。

ほ?

「なので、溶接痕がタテにどうしても入るんですが、それでもよければ出来ますが、いいですか?」。
……ぜ、是非ぜひおねがいしますぅうう。そんなやり方聞いたことないよ。これは、またとんでもない所に来てしまった。手汗が止まらないのは更年期かな? 余計なことは言わずXS-1を高橋さんに預け、連絡を待つことに。

納期は1ヵ月とのことだったので、その間に筑波サーキットの走行ライセンスを取得することにした。以前のライセンスは失効して13年。そう、実はワタクシ長男が生まれる前は、毎月のように桶川スポーツランドと筑波サーキットを走っていたのです。毎回転倒しまくりで、骨折ったり、借金してバイク直してもらったりイロイロやりました(遠い目)。今はライセンス取得に実走行や、マイクロバスでコースまわりながら解説してもらったりはしないんですね。当日スタッフさんに聞いて、少しがっかり。とはいえ、2時間ほどの講習で無事にライセンスゲット。ただ、欲張って四輪ライセンスも同時取得したら、二輪と四輪のライセンスの見た目が一緒。既にどっちがどっちだかわかりません。

そうこうしているうちに、納期よりだいぶ早く高橋さんから完成の連絡が!

ゴトーさんと駆けつけると、右1本出しの見事な集合マフラーがついているじゃないですか! そっと触れてみてまたビックリ! 丸いパイプに見えるところが丸じゃない。自分でも何言ってるかわからないけど、とにかく有機物みたいに複雑かつシームレスに造形されていて、触れば触るほど微妙な曲面が手に伝わってくる。凄い仕事だ。

ゴトーさんに紹介してもらった2人の職人さんの凄い仕事を経て戻ってきたXS-1は、なんかもう別物。おいそれと触れていいんだろうか。
「いいんだよ。これまでは人に頑張ってもらったけど、やっとトミーの出番だな。さあ、解体してフレームから余分な部分をカットして、塗装に移るぞ。やることいっぱいあるんだから、急がないと開幕戦に間に合わないゾ」と、ゴトーさん。
これまでは職人さんが食材をそだてあげてくれたってことですね。なら調理する側には調理技術より、それを無駄にしない食材へのリスペクトと誠実さが大切。あ、またシェフっぽいこと言っちゃいましたね。

取材と製作協力

POWER PIPE

長年レース界で活躍してきた高橋良夫さんが営む、エキゾースト開発が得意なパーツメーカー。S85のオリジナルレーサーの製作など、確かな技術と丁寧な仕事が評判。

次回はフレーム塗装にチャレンジします。
お楽しみに!