MOTORCYCLE

君さえいれば

クラシカルなのにいまっぽい。オンロードモデルなのにオフロードだってイケる。
ロイヤルエンフィールドのスクラム411は、アドベンチャー・クロスオーバーモデルを標榜する
守備範囲の広い一台。そんなニューモデルにモトナビ編集部ヒゴシが試乗して感じたことをつづる。

文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/安井宏充(Weekend.)

現実的な高汎用性の街乗り軽快アドベンチャー

バイクに何を求めるかなんて人それぞれ違っていて、金子みすゞじゃないけれど、みんな違ってみんないい。むしろ、他人が何を求めてバイクに乗るかなんてどうでもいい、というほうが自分の気持ちに素直か。僕がバイクに求めるのは、ここではないどこかへ連れて行ってくれるというワクワク感。バイクは乗り物なんだからそれは当然じゃないかと思う向きもあるだろう。それとはちょっとニュアンスが違う。そのへんの機微までは読まないでほしい。

ロイヤルエンフィールドのスクラム411はそこ、すごく刺さった。ワクワクする。このバイクには取り立てて目立つ特徴があるわけではないし、高級感とか所有感とかブランド力とか、そういうのはあまりない。ブランド力がない、というのは失礼か。でも憧れのロイヤルエンフィールドです、と言うのは嘘くさい。インドの昔からやってるバイクメーカーで、名実ともにクラシカルなバイクを作っているメーカー。それが82年生まれ、ヒゴシ・ショウタが持つロイヤルエンフィールドのイメージだ。だけどここに来て、そんな通りいっぺんのイメージが少しずつ揺らいできてる。現行ラインナップを見るとINT650はすごく魅力的だし、コンチネンタルGTもグッとくる。ヒマラヤもいいバイクだった。スクラム411はそんなヒマラヤをベースに、もう少し街乗りヂカラをマシマシにした「アドベンチャー・クロスオーバーモデル」(by ロイヤルエンフィールド)なのだそう。

人は名前をつけることで物事を認識する。それはバイクのカテゴリだって同じだ。アドベンチャーできる街乗りバイク。いいじゃない。実際のところ、アドベンチャーバイクでアドベンチャーするライダーなんて何割いることか。欲しいのはいつでもどこにでも行けるという可能性。GSやアフリカツインを手に入れるのは夢を買うようなものだ。その点、スクラム411はもっと現実的。その名の通り、411ccの単気筒エンジンを積んだボディは細くて軽い。フロント19インチだが足つきに不安はない(身長177cmのヒゴシの場合)。ポジションもゆとりがあり、ハンドル、シートそしてステップの三角形もごく自然。シンプルなメーターが映す情報に過不足はなく、決して速いバイクではないけど、ちんたら走るクルマを置き去りにするには十分すぎるぐらい速い。ああ、もう君さえいれば何もいらないし、どこにでも行ける。そんな気にさえなる。

かる~いクラッチを握ってポンと離して走り出せば、どこかダダダッと単気筒らしい小気味好い鼓動感で地面を蹴り進む。取り回しも軽いが走りも軽い。それが別にマイナスではなくて、とてもプラス。得てしてこういうバイクは低回転がスカスカだったりしがちだけど、こいつに至ってはそんな心配もいらない。書類上はギリギリ400だったとしてもれっきとした大型バイクだから。そのギリギリ大型扱いの排気量をどう捉えるかが、このバイクを評価する肝要な部分だろう。普通二輪免許では乗れない微妙なバイクなのか、大型バイクだぞと威張れる最小クラスのバイクなのか。ま、そもそも排気量云々にこだわること自体、旧いライダーのカビ臭い考え方かもしれない。

バイクに何を求めるかは人それぞれ。乗りたいのに乗ればいい。少なくとも僕にとってスクラム411は乗りたくなるバイクだった。そぞろ神のものにつきて心をくるはせ、道祖神の招きにあひて、取るもの手につかず。君さえいれば……あとはガソリンがあればOK。春を待たず、どこかに行きたくなってきた。

いまや懐かしい丸目一灯にカバーを装備。これだけでグッと令和っぽい。

アナログの速度計とデジタルの燃料計+シフトインジケーターを組み合わせたメーター。タコメーターはナシ。

ベースのヒマラヤでは21インチだったフロントホイールだが、こちらは19インチを採用。オンロードでの乗りやすさが向上。

シンプルながらメリハリが効いた形状のガソリンタンク。なお、タンク前方の突起物は、ヒマラヤにもあったタンクガード(バンパー)。

411ccの空冷単気筒エンジンは、どこか牧歌的ながら十分なパワーを発揮。ギリギリ大型二輪免許が必要になるが、そのわずかな余裕が気持ちよさを演出している。

タンデムシート一体型のシートはコシがあって滑りにくく、ヌバックのようで肌触りもいい。

ROYALENFIELD SCRAM 411
●サイズ=全長2160mm×全幅840mm×全高1165mm ●ホイールベース=1455mm ●シート高=795mm ●タイヤ=前100/90-19、後120/90-17 ●タンク容量=15L ●車両重量=194kg ●エンジン=411cc空冷4ストロークSOHC単気筒 ●最高出力=24.3ps/6500rpm ● 最大トルク= 3.3kgf・m/4250±250rpm ●価格=838,200円(ベース/グラファイトレッド、グラファイトブルー、グラファイトイエロー)、845,900円(ミッド/ブレイジングブラック、スカイブルー)、853,600円(プレミアム/ホワイトフレーム、シルバースピリット)※試乗車はプレミアム/ホワイトフレーム

ロイヤルエンフィールド・スクラム411 公式サイト
www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/lineup/scram