MOTORCYCLE

Motoな人:ミュージシャン大嶋吾郎 ✕ BMW R18

BMW R18を相棒に選んだリターンライダーの大嶋吾郎さん。
ミュージシャンである彼は、なぜ再びバイクに乗ることを選び、
どうしてこのバイクを選んだのだろう?

文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/三浦孝明

マイ・ミドルエイジ・クライシス

派手な髪の色からわかるように、BMW R18オーナーの大嶋吾郎さんは、いわゆるサラリーマンではない。職業はミュージシャン。取材した時期も、元JUDY AND MARYのボーカル、YUKIの全国ツアーが始まったばかりのころだった。担当はギターとコーラスという。この日はあいにくの雨にもかかわらず、R18で移動してくれた大嶋さん。ロックな男である。

「若いころはVT250乗ったりベスパ乗ったり、いろんなのに乗ってました。昔は駐車禁止の取締りが緩くて停め放題でしたしね。でもクルマにも乗るようになって、だんだん乗らなくなっちゃった。40過ぎたころ、また乗りたくなって調べたら、教習所で大型二輪の免許が取れると知って。すごい時代になったなぁと思った反面、そんなことも知らないくらいバイクから離れてたんです」。

自宅のすぐ裏が教習所があったこともあり、すぐに免許は取ったものの、仕事の忙しさに流されて結局バイクを買うことがないまま時が過ぎた。
仕事。ミュージシャンと言ってもその業務内容はさまざまだ。大嶋さんの場合はどういった仕事がメインなのだろう?

「いわゆる”アーティスト”としてのミュージシャンではなく、サポートミュージシャン、スタジオミュージシャンですね。CDに入っているコーラスもすれば、ディズニーリゾートの日本語の歌に携わっていたりもしています。あとは舞台音楽の作編曲。なので、音楽を演ること、作ること、その両方をする感じです。若いころにバンドやってて、それがだんだん仕事に結びつき、ひとりのアーティストとしてデビューするのではなく、歳とともに仕事として音楽をやる人に特化していまに至るわけです」。

そのように順調なキャリアを重ねてきた大嶋さんだが、ついに50代半ばにして運命の出会いを果たす。

「R18が出たとき、これだ! と思いました。以前はR1200Cが気になったこともあったし、BMWのクルーザー系デザインに惹かれるものがあるみたいですね。ああいうバイク、また出ないかなと思っていたらR18が出たので、もうこれを買おうと決めたんです。ほかのには興味ありませんでした。BMWといえばGSのようなアドベンチャー系もありますが、そっちには全然興味ない。同じクルーザーでもハーレーだとちょっと違う。BMWのクルーザーがいいんです」。

購入時は展示車両にまたがり、自分の体格でも扱えるかを確認しただけですぐに契約したそうだ。
久々のバイクライフに、大嶋さんの生活は大きく変わった。

「バイクがない時期、VWビートルにずっと乗ってたんですが、一度手放してみたら、もうカーシェアで事足りてしまった。そんな状況からいきなりこんなバイク買ったもんだから、まわりも驚いてて。同年代の人に、“大嶋さんは、そっちにいっちゃったんだ”とか言われて(笑)。ほら、男って、50過ぎて急にそば打ちにハマって、店を出したいとか言い出すやつありますよね。“ミドルエイジ・クライシス”ってやつ。僕の場合、R18がそれだったんじゃないかな」。

※こちらのインタビューは2021年5月時点での内容です。

ご自宅の1Fはレコーディングも可能なプライベートスタジオ。ちなみに大嶋さんの髪の色、白いほうが地毛だそう。以前はロングヘアだったがカット。そのタイミングで髪の色を左右入れ替えた。

デジタル/アコースティック問わず、さまざまな楽器を操り、幅広く活動しているので、スタジオにはギターをメインにキーボードや録音用マイク、MIDIパッド、PCなどが所狭しと並ぶ。「趣味でやっている人のほうがいいもの使ってますよ」と笑う大嶋さん。プロとして、求められた音を出せるような機材を選んでいる。

うさぎのキャラクターが印象的なCUNE(キューン)がお気に入りの大嶋さん。この日もインナーのパーカーにはCUNEをチョイス。ライディング時の靴はドクターマーチン一択というところにロックを感じる。ヘルメットはBELLの海外モデルであるブリット。クラシカルな帽体ながら、見る者にシャープな印象を与える。R18はステップ位置がシートの真下なので、小柄な自分でも乗りやすいと大嶋さんは話す。

R18において、何をおいても圧倒的存在感を誇るのがやはりこのエンジン。1801ccの空油冷2気筒ボクサーエンジンは91psを発揮し、3000rpmで最大トルク16.1kgf・mを引き出す。そしてなにより、この造形の美しさが格別だ。

大嶋吾郎 OHSHIMA GORO
スタジオ、サポートミュージシャンとして、さまざまなアーティストのレコーディングやコンサートツアーで活躍するとともに、近年は舞台音楽の作編曲家や音楽監督としても活動している。