Why You Ride?/あなたがバイクに乗る理由
バイク乗りみんなが、若いころから乗っているわけじゃない。
大人になってバイクと出会い、ともに暮らすようになったライダーも多い。
SRを駆る彼女もまた、そんなライダーのひとりなのだ。
文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/安井宏充(Weekend.)
Why You Ride?/黒木伴井さんの場合
待ち合わせ場所にいた女性ライダーは、青緑色のレザージャケットがとても様になっていた。その横に停めてあるSRも、強い日差しを浴びてとても輝いている。黒木伴井さんがライダーになったのは2021年の春。きっかけは、バイクとは関係のない仕事で訪れた東京・銀座のセレクトショップ、モトーリモーダであるヘルメットを見かけたことだった。
「ルビーのヘルメットに一目惚れして、“これをかぶってバイクに乗りたい!” と思い、免許なんて持ってないのに買っちゃったんです。ただ昔、母がスクーターで事故に遭ったことがあって、家族の中でバイクは禁止という暗黙の了解がありました。それに私自身も、まだ子供が小さかったころに、寝かしつけた子供を暴走族の音で起こされた記憶があって(笑)、バイクに対する印象は良くありませんでした」
やりたいことは、やっておかなきゃ!
そんな黒木さんだったが、バイクに乗りたい気持ちをどうしても抑えたくない理由があった。それは少し前に若くして他界した友人の存在だった。
「同世代の友人が病気で亡くなったことで、やりたいことはやれるうちにやっておきたいって思うようになっていたんです。私だって、この先なにがあるかわからない。だからバイクも諦めたくなかったんです」
そうして教習所に通い始め、「クルマの免許をMTで取った世代だから」ということで、程なくして無事に卒業。晴れてライダーとなった。
そんな彼女のバイクライフだが、じつはインスタグラム(美魔女ライダー?♥️Moi)を使って事細かに公開されている。そもそも筆者が彼女を知ったのも、インスタがきっかけだった。投稿から感じる只者ではない雰囲気。そう、彼女は単なるライダーではなく、もうひとつ別の肩書きがあった。それが「美魔女」である。
「娘が初孫を妊娠したころ、自分も何か挑戦したくて美魔女コンテストに応募したんです。ファイナリストになれましたが、もう7年も前。いまでは孫も4人います(笑)」
まさかのおばあちゃんライダーでもあった黒木さん。そんな彼女にライダーとしての目標を聞いてみた。
「バイクには週に何度も乗ってるんですけど、じつはまだ、高速を走ったことがないんです。自宅から海沿いを走って帰ってくる“いつものコース”ばかりで。今後はもう少し遠くまで行ってみたいです」
……やっと初心者らしい答えが聞けた。逆にいえば、もう黒木さんは一人前のライダーになっているということか。(※編集部注:こちらのインタビューは2022年4月時点の内容です)
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