46worksが理想とするミラーを、TANAXが作ったら
世界的カスタムビルダーである46works中嶋志朗氏と、
バイク用ミラーの最大手、TANAXが作り出した美しき46ミラー。
その誕生秘話を中嶋氏が語る。
※こちらはMoto NAVI No.124に掲載した記事を再編集したものです
文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/三浦孝明
46works 中嶋史朗インタビュー
名実ともに日本のトップビルダーのひとりである46worksの中嶋志朗氏。そしてバイク用ミラーのトップブランドとして知られるTANAX(タナックス)。その両者が手を組み、2024年の夏、特別なミラーを世に送り出す。その誕生に至る経緯とそこに込めた思いを、中嶋氏に聞いた。
2023年に開いた個展で、タナックスの方と出会ったのがきっかけでした。そのとき展示車両には汎用品のミラーヘッドを流用した自作ミラーを付けていたんですが、「それを市販してほしいと言われるんです」なんて話をタナックスさんにしたところ、46worksオリジナルミラーの製作を社内で検討しますとおっしゃってくれたんです。それがなければ、今回の件は実現しなかったでしょうね。
カスタムバイク、特にショーバイクは要素を足していくことが多いのですが、僕は削ぎ落とす中でデザインするスタイル。今回作ったミラーも同じで、無駄な装飾はないけど細かいディテールにこだわりました。
ミラーってどうしても後から取って付けたようなものが多いので、カッコ悪く見えがち。でもこれは存在感はないんですけど、後ろはきちんと見える。高速や峠など気持ちよく飛ばしたいなら、常に後ろは見ていたいですよね(笑)。見栄えがよくても視認性が悪いミラーはイヤ。そもそもバイクにとって大事なのは、ストレスなく楽しく乗れること。そのうえで、バイクを降りて自分愛車を見たときに、「カッコいいな」と思えること。すべてのものづくりにおいてそれを目指しているので、かたちなんて二の次なんです。
自由な発想で使いながらも、46worksの雰囲気を味わってほしい
もとは僕が作るバイクに似合うものを、と思って作ったミラーですが、ユーザーには自由な発想で使ってもらいたいです。うちは部品単体の製作は 請け負っていないし、ひとりでやっているので、年間数台しか作れません。だからうちの製品、うちのテイストのものってなかなか世に出せない。でもミラーならどんなバイクにも付けられるので、まずはこれで46worksを味わってほしいです。
そもそもなぜ僕がミラーを自作していたかというと、こういう三次元形状のものがなかったからです。多くが棒を曲げただけだったり、板状や板を切り抜いたものにミラーを合わせただけ。こうした三次元形状のものを削り出すと大きな塊から作ることになるのでゴミがたくさん出てしまうし、コストもかさむ。かといって溶接で作るとクオリティと量産のバランスが難しい。これを現実的な価格で出せるのは紛れもなくタナックスさんのおかげです。
デザインの一部としてカッコよくデザインされる灯火類と違い、ミラーを付けるとカッコ悪くなることがあります。一方でこれなら付けてカッコよく、視認性も高い。まさに自分の理想形なんです。ここ数年はこれが一番いいと思えてますね。いちショップがミラーを製造販売するとなるとハードルが高いので、タナックスさんとやれて良かったです。
左/今回製作された46ミラーのベースとなった、中嶋氏お手製のミラー。ミラーヘッドには市販品を流用しながら、ステーをオリジナルで製作。取り付ける車両の年式によって鏡面の大きさを変えなくてはいけなかったが、元より車検に通るよう作っていたので、基本的に製品化の際に妥協した点はないという。 右/面の組み合わせでも棒でもなく、三次元的なねじれを活かしたステーの造形は唯一無二。自分の理想形といえるミラーを作ることができた。
製品そのものの出来に加え、こうした化粧箱があるとより所有感が満たされ、「いいもの感」が増す。こうした世界観の作り方、ストーリーこそ、46worksが注目される所以であろう。なお、こちらはまだ最終版ではないので、製品がどのようにパッケージングされるか楽しみだ。 なお、発売は2024年夏で、価格は1本(片側)で19,800円(税込)を予定している。
46works 公式サイト
46works.net
TANAX 公式サイト
www.tanax.co.jp