Motorcycle QuestionS(2019年6月号 No.100)後編
文/高梨達徳(Moto NAVI) 写真/高柳 健
乗車時での安全意識が高まっている中、一番注目されているライディングギアといえば胸部プロテクターだろう。国内メーカーで一番軽量かつ薄型のモデルをいち早く市場へ導入したRSタイチの開発者に、そのこだわりを聞いてみた。
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水より比重の軽いポリプロピレン樹脂を特殊成型技術によって成型したハニカムコア材「テクセル」とフィルム状に伸ばし織り込んだ素材を何層にも重ねて熱で圧縮した粘弾性素材「KaRVOシールド」を組み合わせた自社製の胸部プロテクターは、世界の安全基準の中で厳しいと言われているCE規格の中でも、より高い剛性を求められるprEN1621-3 level2の最新版をクリアしている。
「胸部保護に関しては、ヨーロッパでもまだまだこれからの課題であることは間違いありません。ただ、日本のように接触事故よりも単独での事故の件数が多いので、捉え方が違うのは事実です。胸部プロテクターのCE規格prEN1621-3のlevel2に関しては、まだまだ仮の状態なんです。ですので、日本的な考え方の陥没などから身体を守る強度も基準も取り入れられています。そこで、私たちもEICMAなどの展示会で新しい技術や素材を探していますし、承認基準について、現地の調査会社とコミュニケーションを積極的に図るようにしています」
ホンダの提案から始まったプロテクターの開発は製品化され、ホンダの純正ギアとしてもラインナップされた。少しでも恩返しになったかなと栗栖さんは話す。
「自動車は自動運転や自動ブレーキなど、技術の進歩と共に死亡事故件数は減少しているんですが、オートバイに関しては、減少傾向にあるものの、大幅な改善ができていません。弊社のホームページでも堺市東消防署に協力いただき、救急救命士の方に胸部保護の重要性についてのインタビューを掲載するなど、ただ死亡原因をアナウンスしていくだけではなく、その重要性を伝えていきたいと思っています。胸部プロテクターの着用も強制的に義務化されるのではなく、ヘルメットを身につけるように、ライダー達が当たり前に装着するようしたいですね」
そもそもCE企画ってなに?
EU(ヨーロッパ連合)加盟国で安全承認基準を満たすものに付けられる適合規格。この厳しい検査をクリアした商品だけがEUに加盟する各国で販売することができる。胸部プロテクターに関しては、公道走行での使用の場合、日本国内で明確な基準がないため多くのメーカーでこの規格をベースに商品を開発、販売している。
HELINXセパレートチェストプロテクターHELINXセパレートチェストプロテクターは、TPUやポリウレタンを組み合わせて立体エアスルー構造を採用するなど、これまでに蓄積されてきたデータが詰め込まれたエントリーモデルだ。
RS タイチ 企画部 次長 栗栖 慎太郎
学生時代は、大学でアパレルデザインを学びながら、モトクロスに熱中する。卒業を前からRSタイチノの企画などに携わり、そのまま入社。現在ではアイテムのデザインや設計だけではなく、ホームページやイベントなども手掛けている。
取材協力RSタイチ
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