MOTORCYCLE

僕たちはいま、BMW R 18に興味津々

待望のBMW製クルーザーモデル、R 18。
新設計の1800cc空水冷ボクサーエンジンを搭載したニューモデルを
その誕生の経緯を交えて紹介する。
※Moto NAVI 2020年6月号に掲載された記事を再編集しています

文/青木タカオ 写真/安井宏充(Weekend.)

衝撃デビューとは、こういうことを言うのだろう。登場の仕方は常識破りで、モーターショーでコンセプトモデル(参考出展車)披露の後に市販予定車を見せ、そして発売に至るという既存路線とはまるで異なった。

始まりは、毎年5月にイタリア北部のコモ湖畔で開催されるヒストリックカー/モーターサイクルのための競技会「Concorso d’eleganza Villa d’este(コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ)」。まず2016年に、1936年式モデル『R5』をオマージュした『R5 Hommage』が現れ、その美しさにバイクファンらが息をのんだ。このときボクサーツインエンジンは当時の500ccを再構築したもので、新たにスーパーチャージャーを搭載するというチャレンジもおこなわれていた。エンジン以外のほぼすべてを一から製作したワンオフモデルで、すべて手作り。日本のファンは、12月のヨコハマ・ホットロッドカスタムショー(以下、HCS)や翌17年春の大阪モーターサイクルショーで目の当たりにすることできたものの、当時はこれが『R18』発売への序章であったことなど、誰が予想できただろうか。

2018年12月のHCSで、滋賀県にある「CUSTOM WORKS ZON(カスタムワークス ゾン)」という小さな工房が、BMW Motorradの依頼で手がけたのが『Deperted(出発)』というカスタムだった。ボンネビルソルトフラッツで最高速チャレンジするランドレーサーをデザインモチーフとし、カスタムショーでのNo.1を意味する「バイク・オブ・ショー・モーターサイクル」に輝く。その心臓部こそが、後に発表される『R18』のためのオールニュー・エンジンであった。

このときカスタムワークス ゾンの吉澤雄一氏は「エンジンユニットだけ渡され、どんなバイクにすればいいのか懸命に考えた」と教えてくれた。「BMWが1800ccもの超弩級ボクサーツインを開発し、近い将来の新型モデルに搭載されるのではないか」という噂は、このとき瞬く間に広まり、そしてスクープとして専門誌やネットニュースなどが大きく取り上げた。

そして2019年のヴィラデステで『Concept R18』がついに姿を現す。一見リジッドに見えるカンチレバー式のリアショックを備える車体に、ポリッシュ仕上げのアリミ製シリンダーカバーを持つボクサーツインが積まれ、マフラーはフィッシュテール、燃料タンクはティアドロップ型、剥き出しのオープン・シャフトドライブにも度肝を抜かされた。EICMA 2019(ミラノショー)ではビキニカウルやメガフォンマフラーを備え、足まわりをアルミキャストホイール仕様とした『Concept R 18 /2』も披露。発売が秒読み段階に入ったことを意味していた。

市販版デビューの地として考えられていたのは、アメリカ・テキサス州オースティンで毎年4月に開催されるカスタムバイクショー「ハンドビルトショー」だったことも興味深い。今般の新型コロナウイルスの影響により中止となったが、BMWはクルーザー市場の本場アメリカでいち早く披露させるという戦略を打ち立てた。そして設定するカスタムパーツたちも、米国市場やクルーザーセグメントでの強豪という顔ぶれ。マフラーはBMWが採用してきたアクラポヴィッチなど欧州ブランドではなVANCE&HINESとし、Roland Sands Design、Mustang Seat、米国ブランドをずらり並べている。

米国での車体価格は、ベースモデルが1万7495ドル、ファーストエディションを1万9870ドル~とし、日本ではベースモデルを254万7000円、追加装備を満載したクローム仕上げのファーストエディションを297万6500円でラインナップする。ハーレーダビッドソンらライバルを強く意識した価格設定とするなど、クルーザーセグメントにかけるBMWの強い意気込みを感じずにはいられない。

BMW R18 公式サイト www.bmw-motorrad.jp/ja/models/heritage/r18