普通に、カッコいい。~インディアン、新型チーフレビュー~
普通に、っていつから褒め言葉になったのだろう?
そして、インディアンのチーフって、こんなバイクだったっけ? 普通に、カッコいい。
2021年に誕生から100年を迎えたチーフに乗って感じたこととは。
文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/安井宏充(Weekend.)
インディアン、嘘つかない。そんなフレーズに納得し、うなずく。そんなときめきがここにあった。
インディアン・チーフ。インディアンというブランドに疎くても、でっぷりしたフロントフェンダーに輝くネイティブ・アメリカンをかたどったオーナメントは見たことがあるはず。細工が美しい革張りのシートに腰を下ろし、大きく手前に引かれたハンドルバーを握ってアクセルを開ければ、満艦飾の車体がドドドッと動き出す。細部まで高級感たっぷりで、チーフとはまさに憧れのかたまりのようなモデルだった。
しかし、である。誕生100周年を迎えたインディアン・チーフはすべてを一新して生まれ変わった。率直な印象を言葉にすれば、チーフは若返った。100歳にして若返ったのだ。
ここで紹介するチーフ・ダークホースは、新生チーフシリーズ3モデルのなかで最もベーシックな一台。小ぶりなヘッドライトにクルーザーとしてはオーソドックスなハンドルバー、シンプルなソロシートはクッション性が高く、オーソドックスな2本のリアサスペンションと相まって快適な乗り心地を実現している。ただ、身長177cmの筆者でややハンドルが遠く感じたのは事実。フルに切ると外側が遠いのだ。ハンドルを頂点にリアへ向かって下がっていくボバースタイルのため、腰の位置が低いのがそのように感じさせる要因かもしれない。
一方、テールまわりはベーシックとは無縁で、途中でぶった切ったようなリアフェンダーの左側にナンバープレートステーが設けられ、さながら手の込んだカスタムモデルのよう。ウインカー一体型のテールランプが、この保安部品をとっぱらったかのようなテールまわりをうまく演出しているのは言うまでもない。
走りはビジュアルとは裏腹に、しっかりスポーティ。重量級ながら、Vツインでスポーツしようという意気込みを感じる。アクセルのオン/オフにしっかり車体が反応し、キビキビした走りはビッグネイキッドっぽくもある。むしろもう少しマイルドでもいいのに、と思い、ライドモードをスポーツからスタンダードに変更(ほかにツアーモードがあり)すると、格段にマイルドに。ここらへんの電子制御系の使い方や、ライデイングモードのメリハリの付け方はとても現代的。オールディーズナンバーのようなド定番スタイルだけに、なんとなく中身までそう捉えてしまいがちだが、当然走りや使い勝手はきちんと最新である。経年のトラブルに怯えることなく、美味しいところを美味しく味わう。それができるのはニューモデルの特権だ。週末しかバイクに乗れないホリデーライダーなら、それも大切にしたいところである。
ほか、チーフシリーズにはミニエイプハンドルバーにスポークホイールを採用するなど、よりカスタム感を強めたチーフ・ボバー・ダークホースと、チーフのクルーザーとしての性格をより強め、着脱が容易なウインドシールドやレザーサドルバッグなどを装備するスーパー・チーフ・リミテッドがラインナップされる。いずれも同じ1.9L空冷Vツインエンジン、サンダーストローク116を搭載するなど基本設計は同じだが各々きちんと特徴づけられているので、きっと好みに合うモデルに出会えるだろう。
と、一通りチーフ・ダークホースを見てみたが、このバイク、普通にカッコいい。一見普通のアメリカのハンバーガーだけど、実は一流のシェフが腕によりをかけて作った逸品とでも言おうか。それでいてお高く止まっているわけでもなく、しっかりジャンクな味わいも兼ね備えているのがニクイ。普通にカッコいいインディアン・チーフとなら、普通に普通じゃない、オンリーワンのバイクライフが送れそうだ。
インディアン・チーフ・ダークホース公式サイト
www.indianmotorcycle.co.jp/chief-dark-horse