ほかのショップがやらないことを、やる。
既存のショップがやらなかったようなことを、積極的に行っていく。
motoGITA代表の篠木光広さんが考える「バイクを美しくする理由」とは?
photo:高柳健 text:宮崎正行
アメリカがカッコ良かった
ショップのある立地からほど近い高井戸の小学校に通っていた「motoGITA」代表の篠木光広さん。1978年生まれの42歳だから、もしかしたら80年代よりも90年代の記憶のほうが濃いかもしれない。
そんな篠木さんが小学校1年生の時から夢中になって打ち込んでいたのがスケートボードだ。誰に教わったわけでもなかったというが、中学生のときには持ち前の運動神経でかなりのレベルにまで上達し、大会にもエントリーしていたという。
しかし、いきなりそこに割り込んできたのがバイクだ。
「アメリカンカルチャーに全身どっぷり浸かっていましたね。あのころは海の向こうの“ノリ”がめちゃくちゃカッコよく見えて仕方がなかったです。当時ですから動画はビデオテープだけですけど(笑)。
音楽も、まだインディーズだったグリーンデイとかオフスプリングとか……。スケーターが集まるメッカ、新宿中央公園に通いはじめたのは中学生のときでした。もちろんボードを自転車に載せて、です。そのころの僕の居場所はそんなロケーションでした」
スケボーからバリマシへ
そう、篠木さんはだいぶマセていた。
「自転車で行くと帰りは疲れてヘトヘト、ペダルをこぐのもやっとというカンジでしたね。でもそうこうしているうちに高校生になり、もともとすこし興味があったバイクに乗るために原付免許を取得。でも当初バイクは、スケボーに行くためのアシかヤンチャするときの道具という存在でしかなかったような気がします。
でも、あるとき……雑誌『バリバリマシン』と出会ってしまった。あのインパクトは強烈でした」
走り屋を標榜するすべてのライダー必読の月刊二輪誌、通称“バリマシ”。その誌面の勢いは、隆盛だったバイクブームの一角をしっかりと支えていた。
バイクは自分で直すしかなかった
「はじめて買ったバイクは、高校の友人に2万円で売ってもらったヤマハのスーパージョグZです。これがかなり速かった! このスクーターに乗ってヒザを擦ったときから、僕の人生はかなり方向が決まっていったような気がします(笑)。
同じようなタイミングでライブディオZXに乗っていたバイク好きの友人に出会ったことも、とても大きな出来事でした。そのときはじめて、なんでも話せて心が許せる仲間ができたと感じましたね
ジョグ、カブ、ウルフ50、モンキーR……いろんなバイクに乗りました。新車で買ったわけじゃなかったし、ギリギリな改造もたくさんしていたので、地元のバイク屋さんに行くとあんまりいい顔をされませんでした。
そんな理由でバイクの修理は自分ですることがほとんどです。そのうち焼き付いたエンジンを載せ替えたりもするようになっていったので、素人なりに自然とバイクを触るテクニックは上達していったのかもしれませんね」
フリーウェイがきっかけで就職
ひたすら走ることが楽しかった篠木さんに、ジャンルに対するこだわりはほとんどなかったという。あるとき、ダートラ仕様のヤマハSRからいきなりホンダ・フリーウェイに乗り換えた。
「ちょっとだけカスタムしてあったそのフリーウェイでも、よく峠に行ってました。右足で踏むフットブレーキを駆使してバイクの向きを器用に変えながら……NSRとかガンマとかのレプリカ軍団を追い回す。そりゃもう、めちゃくちゃ楽しかったです。『大垂水や奥多摩にヘンなスクーターがいる』って言われていましたけど(笑)。とても気に入っていたフリーウェイだったんですが、いまいち調子が良くなかった。でも自分にできることには限りがあるので、どこか直してくれるショップがないかと探し回りました。そうしたら、本当にたまたま近所にフリーウェイの専門店があるのを見つけたんです。さらにはそのショップ、求人募集も出しているじゃないですか。職を転々としていた時期だったこともあって、僕はそこで働くことを勢いで決めてしまいました」
師匠の忘れられない言葉
篠木さんのメカニックとしての人生はそのショップからスタートする。整備をイロハから教えてくれる、メカの師匠につくことができたのがまず幸運だった。その師匠の言葉は今も忘れられない。「すぐにパーツ交換せず、パーツそのものを直すことで技術をもっと磨くべし。“チェンジ”ニアではなくエンジニアになれ」と諭されたことはしっかり覚えている。
「いきさつがあってそのショップを辞めたあとに、都下のスクーターの専門店に移りました。ちょうどそのころ、『自分の将来のためにも整備士の資格をちゃんと取ろう』と思い立った勢いのままに、すぐに学費を作ってのち整備士講座に通いはじめました。将来をうっすらと『いつかは独立して自分のショップを持ちたい──』と思い描くようになっていたのもそのころです。結果、ショップには6年間ほど勤めました。
その後、もともと大好きだった古いバイクをレストアや整備をするスキルが欲しくなって、有名な旧車専門店に転職します。当時の愛車もカワサキKZ1300でしたしね。古いバイクもしっかり触れるようになってから独立したかった。そのためのステップでした」
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取材協力
Technical Shop motoGITA
古い空冷カワサキがあると思えば、最新スーパースポーツも居並んでいる。マニアックなイタスク、リッタークラスのツアラー、80年代の極上原付スクーター……。あまりに無節操な、しかしバイク好きだったら思わずドキドキしてしまう幅広いラインナップがモトジータの稀有なキャラクターだ。営業時間は11〜27時。
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