MOTORCYCLE

みんなが愛したモンスター。どう変わった?

ドゥカティが生んだ傑作、モンスターシリーズ。最新モデルでは
トレリスフレームを捨てさるなどすべてを一新して生まれ変わった。
新生モンスターはいったいどんな化け物になったのか?

文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/高柳 健

捨てて、なにを得たか

名前をつけてやる。ドゥカティの他のモデル――ストリートファイターやスーパースポーツ、それからスクランブラーのような――、カテゴリーそのものを背負った名前を。

なんてことを考えながらハンドルを握り、アクセルを開ける。しかし、いくら考えてもモンスターはモンスターでしかないのだ。
振り返れば、初代となるモンスター900が登場したのは1993年。もう30年近く前のことになる。いまでこそディアベルだ、ムルティストラーダだ、ラインナップ豊富なドゥカティだが、当時の同社といえばまだカウル付きのスポーツバイクばかり。そこにスーパースポーツのフレームに空冷エンジンを積んだ独特なデザインのネイキッドモデル=モンスターを投入したもんだから、あーだこーだ言われまくった、なんて話はアラフォーの筆者でも知っている。しかしモンスターはその実力でうるさい外野を黙らせ、ドゥカティブランドを支える屋台骨へと成長していくのは、誰もが知る通りである。

なるほど。いままさに新型モンスターは、この歴史を繰り返そうとしているのか。
2021年、ふたたび僕たちの前に現れたモンスターは、大切なアイコンであったトレリスフレームを捨てた。その衝撃は大きく、これはモンスターではないという声もあった。言い分はわかる。自分もあのフレームワークに憧れたものだ。だがそれを誰よりも認識していたのはほかならぬドゥカティのはず。自ら最もアイコニックなものを捨ててまで欲しがったもの。それが軽さ。それも圧倒的な軽さだ。乾燥重量で166kg、装備重量でも188kg。これはまるで250 ~ 400ccクラスではないか。バイクにとって、軽さはとても重要なことであるとライダーなら知っている。加速はもちろん、コーナリング、取り回し、メンテナンス。バイクが軽くて困ることなどあるか? 何もない。

 

くびきから逃れて

今回の試乗では、神奈川県の横浜市から東京都内、そして首都高とモンスターとのランデブーを楽しんだが、どこにいてもモンスターはモンスターである。街なかでは従順な姿を見せたと思ったら、アクセルひとつで弾けるようにダッシュ。スコンスコンと小気味よい感触を伝えるシフトペダルのクリック感はドゥカティらしくない、なんて言うと失礼か。そのくらいバイクとしてのベースが成長。格が上がったのがわかる。モンスターがモンスターであるために自らを閉じ込めてきたトレリスフレームというくびきを捨てたことで、かえってモンスターはさらなる化け物となれたのだ。

とはいえ、モンスターは受け継ぎ、育ててきたものをすべてを捨てたわけではないのも事実。横から眺めたときの、ヘッドライトからハンドルポストを越え、ガ ソリンタンクの稜線をテールに向けて辿ると現れるシートのくぼみ。そしてそそり立つ壁を上ると見える上向きにツンと上がるテールまわり。トレリスフレームに気を取られていたが、その美しき野獣の背中を思わせるボディラインこそ、モンスターをモンスターたらしめていた重要なファクターではないだろうか。

モンスターは生まれ変わった。かつてのモンスターがその存在を以ってネイキッドの概念を変えたように、今度のモンスターは自らが作ったネイキッドの概念を再びぶっ壊す可能性に満ちている。それも含め、モンスターはモンスター。何を捨てようが、名前を付けるならモンスターであり続けるのだ。

 

DUCATI MONSTER

歴代モデルに引き継がれ、デザイン面での大きな特徴となっていたトレリスフレームを廃止。パニガーレV4譲りのアルミ製フロントフレームを採用することで大幅な軽量化に成功した。しかし、左右に大きく張り出した立体的な形状が印象的なガソリンタンクや、シートからテールランプに向けてのラインなどは、初代モデルから踏襲される曲線的で流麗なもの。そこのイメージが変わらないので、モンスターらしさが失われてはいない。まさしく現代の価値観に合わせた正常進化と言ったところだろう。

●サイズ=全長――mm×全幅――mm×全高――mm ●ホイールベース=1474mm ●シート高=775mm(日本仕様:ローシート、サスペンションキット装着) ●タイヤ=前120/70 ZR17、後180/55ZR17 ●タンク容量=14L ●乾燥重量=166kg ●装備重量=188kg ●エンジン=937cc テスタストレッタ 11°V型2気筒4バルブ・デスモドロミック水冷 ●最高出力=111ps/9250rpm ●最大トルク=9.5kgf・m/6500rpm ●価格=1,445,000円(MONSTER、受注生産)/ 1,495,000円(MONSTER+)