深遠なる「輸入新車」の世界に触れろ!
国内メーカーのロゴを掲げながら、海外を主戦場とするバイクがある。
なかなかお目にかかれないそんなバイクたちに乗れると聞き、
バイク館主催の試乗会に飛んでいった!
文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/日越翔太(Moto NAVI)、高柳 健、バイク館
職業柄、存在を知っているものもあった。しかし、現物を目にするのは初めてのものばかり――。
全国に60店舗を展開するバイクショップ、バイク館主催のメディア向け試乗会が開催されたのは12月の後半のこと。会場は埼玉県川越市にある教習所で、天気は絵に描いたような冬晴れ。加えて、12月23日発売のモトナビNo.119の締切明けのタイミングだったので、気持ちまで晴れやか!
そんなワクワク気分で駆けつけた本誌ヒゴシが出合ったのは、国内メーカー製を中心とした、海外生産の小排気量モデルたち。バイク館のフレーズを借りれば、「輸入新車」と呼ばれるそれらの車両を前に、ついついテンションは急上昇! ここまでバイクで来たので、その道のりは極寒だったけども! おまけに21機種も揃えてくれたというのだから、思わず笑みがこぼれる。
コース説明などのブリーフィングを経て、さっそく試乗開始。
手始めに乗ってみたのはヤマハのMT-15。155ccの水冷単気筒エンジンを積んだMTシリーズの末弟で、デビューは2019年とのこと。日本国内では未発売で、主な市場はインドネシアやタイなどのアジア諸国。数回、街で見かけたことはあったが、乗ったことがなかったので気になっていた一台だ。
エンジンをかけてコースに出る……と、その前にまず取り回しがラク! やっぱりバイクにとって軽さは正義。大正義。走り出しても決してパワフルではないが、155ccあってこの軽さ(133kg)だけに、キビキビ気持ちよく走る。思いっきりアクセルを開けてもかっ飛んでいくわけでもないので、恐怖感は皆無でただひたすら楽しい。
このバイクに関するネット記事を見ると、ハンドルバーの広さに対するネガティブな意見を見かけるが、個人的には気にならず。たしかに小排気量車にしては大柄なポジションだし、すり抜けをバンバンするタイプなら気になると思うが(幅があるうえに、ミラーを含む幅がハンドル幅よりちょっと広い)、ヒゴシ的には問題なし。楽しくてカッコいい、しかも維持費は安い。サイコー! 気になるお値段は369,000円(以降、価格はすべて2022年12月現在のバイク館での販売価格)。
次に紹介するのは、ホンダのWINNER X(ウィナーエックス)。バイク雑誌の編集長でありながら、恥ずかしながら寡聞にして知らなかったモデル。「よし、このスクーター乗ってみるか!」とまたがったものの、あれ? エンジンがかけられないと困惑していた僕に、バイク館のスタッフさんが説明してくれる。スマートキーでの始動のため、ブレーキレバーに引っ掛けてあったキーをメーター付近に近づけないといけないそうだ。
気を取り直してエンジンスタート。スロットルをひねっていざ出発……と思ったが、むなしく響く空ぶかしの音。これ、もしかして……と、左のステップを見ると、シフトレバーがコンニチハしている。アンダーボーンフレームだったのでスクーターと思いこんでいたが、ウィナーXは6速MTを採用したれっきとしたスポーツバイクだそう。いやはやおみそれしました。
さっそくギアを1速に入れて出発。おお、けっこう速い。このクラスとしては十分すぎるトルクでグイグイ車体を押し出してくれる。ニーグリップができないので(アンダーボーンフレームなので燃料タンクが股の間にない!)身体をどう固定すべきかわからず、どういう気持ちで乗ればいいのかわからない。というかこのバイク、速くない? スクーター気分で乗っていると困惑する速さの一方、スポーツするには乗り方がわからない。ニーグリップさせてくれよ! いままでにない新しい乗車体験ができたのは事実。クラッチ操作はしたいし、ちんたら走るのはイヤ。でもポジションはラクなのがいい。欲しがりすぎじゃありませんか? よくばりな一台である。379,000円。
……と、こんなふうにあれこれとっかえひっかえ乗ってきたのだが、ほかに印象に残ったモデルを紹介しておく。
ホンダのX-BLADE(エックス-ブレイド)。正統派のスポーツネイキッドといったところ。162ccの空冷単気筒エンジンはこちらが求めた仕事をきっちり過不足なくこなしてくれる。街乗り+ときどきツーリングくらいなら、高速にも乗れるこいつくらいが最高かも。先に価格を知ったので正直、もっと安っぽいのかと思っていたけれど、質感もGOOD! ホンダ恐るべし。あとはこのデカ顔が好みかどうかだけ! 289,000円。
アプリリアのSR125。名前につられそうになるが、アプリリアでスクーターなのでご注意。シャープなデザイン通り、スポーティによく走る。前後14インチの足まわりで直進安定性が強いので、12インチのスクーターに慣れていると最初は驚くかも。慣れればすぐにヒラヒラスイスイ走れて楽しい。299,000円。
最後はインドのヒーローというメーカーのX-PULSE200 4V(エックス-パルス200 4V)。かつてはホンダの合弁会社(HERO Honda)として急成長した同社のデュアルパーパスモデル。ユーロ6をクリアした199ccの油冷(!)単気筒エンジンはけっこうパワフルでガンガンいける! ナックルガードやスキッドプレート、エンジンガードなどが標準装備なのもいい。バイクは国産に限る! インドのバイクなんて……と思ってスルーしてしまうのはじつにもったいない! ただ、どんつき(アクセル開け始めの急な加速)がちょっと気になったのも事実。慣れの部分が大きいことではあるけれど。369,000円。
というわけで、仕事を忘れてじっくり楽しんだ輸入新車試乗会。自分に合った一台を国内モデルから探すのはもちろんだが、こういった搦手での愛車探しもまた楽しく、奥深いものだ。日本車であって日本車でない雰囲気を味わうもよし、ヒーローのように未知のバイクを求めるもよし。
アンダー40万円で始める輸入新車ライフ。これ、面白いかも。
バイク館 公式サイト
www.bikekan.jp
著者プロフィール
日越翔太(Moto NAVI編集長)/排気量でバイクを差別するなんて考えたこともない博愛主義者。愛車はヤマハMT-01とホンダ・ゴリラ。それから50万円で購入したポルシェ・カイエン。