CAR

北のボ日記 #5「南へ走れ、ドライの道を!」

他県の一般的な春の様子とはたいぶ異なるのが北海道の春。
ドライ路面に雪、それから氷が入り交じる状況下で、
ミシュランのスタッドレスタイヤ、X-ICE SNOWを堪能してみました。

文と写真/淺川覚一朗

春休み、そして入学式。というと、桜の咲く、花の散る姿を思い浮かべる人も多いことでしょう。しかしそれは、僕の住む北海道とは縁のない話です。
ここ美唄市は北海道の中央部、札幌より北、旭川よりは南にありますが、入学式は「晴着で歩く道の雪が融けているかどうか」を気にするもので、桜は「ゴールデンウィークに間に合うか」を心配するものです。

そんな春休みにクルマで出かけようとするとどうなるか? 今年の場合、街の道路はなんとかアスファルトが顔を出していました。しかし、山や峠はもちろん、平野部でも、まだ雪が降るかも? といった様子でしたから、当然、タイヤはスタッドレスのままです。
しかし、日が長く、暖かくなり、雪が融け始めたら、そぞろ神に取り憑かれてしまうのが、長く暗く冷たい冬を過ごしてきた北国の人間の性というものです。

そこで目指すのは、やっぱり南でしょう。

「道南」と呼ばれる北海道の南の中心都市は、夜景で知られる函館市です。美唄から函館まで、およそ300kmほどの道のりですが、今回は一般道だけでなく、すっかりドライ路面になっているはずの高速道路で、ミシュランのスタッドレスタイヤ、 X-ICE SNOWの挙動や感触を確かめるためにも、千歳市(飛行機の路線でいうところの「札幌」です)あたりからは高速道路にのることにしました。距離は少しだけ遠回りになって、一割ほど増えます。雪で、氷で、安定の挙動で安心させてくれたX-ICE SNOWはドライ路面を長駆して、どんな感触なのか? 充分走ってくれるのか? そのへんを確かめるのが、この函館への旅です。

春の北海道では、雪の下から色々なものが顔を出します。蕗の薹、クロッカス、まだまだ冬毛のエゾウサギ、そして、待ち焦がれた道路のアスファルトは、雪氷や除雪作業、路盤の凍結で痛んで、穴や裂け目、アンジュレーション、水たまり……といった悪条件のオンパレードになっています。北海道では、スタッドレスタイヤはそうした荒れた路面と対峙する必要もあるのです。
路面はドライでも、例えば「八雲PA」の周囲は雪、そして眼前に広がる噴火湾はぐるっと冬景色。これが、北海道の「春」です。

しかし、路面はどこまでもドライ。フラットな路面でのX-ICE SNOWは、ロードノイズこそ多めにしても、走行性能ではある種の夏タイヤよりも余程好印象がありました。また、前述のような悪条件下でも、サイドウォールがしっかり仕事をしている感覚があります。穴にゴン! と落ち込む、あるいは裂け目がしばらく続くといった路面でも、足下でしっかり受け止め、いなしてくれる部分が多い。これが、とにかく氷上ブレーキングに強い、といったキャラクターのスタッドレスの場合、突き上げや挙動の乱れ、あるいはブレーキ時の「ヌルッ」とした感触といった「らしさ」が目立つことを思えば、スタッドレスへの要求性能の各パラメーターを、高次元でバランスさせているのがX-ICE SNOWだと言えるでしょう。

さて、流石に街中では雪をまず見られなくなっていた函館、青空はむしろ初夏の色でした。雪は、ベイエリアから望む函館山の頂に少しだけ。

金森倉庫から望む函館山

トラピスチヌ修道院

函館には、代官山蔦屋書店と同様のコンセプトの函館蔦屋書店があって、さすが! テスラ専用の充電スタンドも。

そして我が「Moto NAVI」も、バイク誌のコーナーで黄色い表紙を輝かせて(?)いました!

次回後編は、北海道の「春」の道で、まだまだ出会う「アイスバーン」そして「深雪」のお話です!

バックナンバーはこちら
北のボ日記 #0「さようならBMW、こんにちはボルボ」

北のボ日記 #1「インチアップに耐えられなかったアジアンタイヤの話」

北のボ日記 #2「ブレーキだけでは測れないスタッドレスタイヤの“安心”」

北のボ日記 #3「北海道のブリヂストン神話、そしてミシュラン」

北のボ日記 #4「脱げないスタッドレス、履けない夏タイヤ。」

著者紹介
淺川覚一朗
じつは旧「NAVI」当時から隅っこで描き続けている古株。「Moto NAVI」では「バリ伝」「ララバイ」のストーリーボードを書いたり、現在は書評「Moto Obi」を連載中。ライター稼業の一方で、北海道美唄市の「地域おこし協力隊」として業務委託を受け、同市の“役場の人”として街おこしに取り組んだり、観光情報を発信中。