MOTORCYCLE

トライアンフ・トライデント660のある暮らし #1

トライアンフ・トライデント660は”いま”の気分にとても合うバイクだ。
その理由を個人的な見解モリモリで説明したい。

文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/安井宏充(Weekend.)

トライアンフがリリースしたミドルクラスのネイキッドモデル、それがトライデント660だ。
かつて同社には同名のモデル(その1 ※リンク先は英語です)(その2 ※リンク先は英語です)が存在したが、名前以外の共通点は3気筒エンジンを積んでいることくらいしかない。そのあたりの詳細はググればもっと詳しいサイトがたくさんあるのでそこに任せるとして、新生トライデントは、とてもいまのライダーの気分に合うバイクだと思う。

その理由はふたつ。ひとつは「車格」。もうひとつは「価格」。
図らずも韻を踏んでしまったうえに大仰に語るほどのことでもないが、ひとつずつ解説したい。

まずはひとつめ。「車格」から。
660ccというと当然大型バイクではあるが、このトライデント、じつにコンパクトにできている。取り回し、そしてまたがった感じ。走り出してもそう。トライデントは400ccクラスのネイキッドバイクのように、ライダーの身体によく馴染む。全長などのサイズそのものに加え、車重も189kgと、教習車でおなじみのホンダCB400SF(201kg)よりも10kg近く軽い。

とはいえ新設計の660cc 3気筒エンジンはそのスペックどおりのパワフルさで、しっかり大型自動二輪車としての力感をライダーに伝えてくる。むしろミドルクラスのトライデントのほうがリッタークラスのバイクと比べるとアクセルを開けがちなので、よりアグレッシブにすら感じてしまう。アクセル開度に対してのレスポンスがとてもよく、まったり乗るというよりはある程度その気になって乗るバイクではあるが、絶対的なパワーはやはりミドルクラスのネイキッド。楽しめる範囲で思いっきり楽しく速い。つまり、とても“ちょうどいい”。

日本で暮らすライダーの平均年齢が約55歳とされるいま、やはり避けられないのが加齢に伴う体力の低下。いつまでもあると思うな親と金。そして体力(筋力)だ。大きなバイクに振り回されるよりも、振り回せるバイクを心ゆくまで味わう。そんなバイクライフのほうが幸せだ。そう考えると昨今進みつつあるミドルクラスへの回帰には意味があり、そのひとつの答えとしてトライデントがあると言える。

サイズ感がよく、走りも素晴らしい。それだけでも魅力的なのに、トライデントは98万円(979,000円)と価格も挑戦的。それがふたつめのオススメしたい理由だ。

昨今、バイクはすっかり高価なものになった。進む電子化、排ガス規制への対応など、その理由は考えるとキリがない。また、大卒初任給や会社員の年収の推移を見るに、この30年のあいだ日本経済が停滞したままであるがゆえに、相対的に高く感じるということもあるだろう。経済の話はさておき、もはや100万円では新車の大型バイクを買うのは難しい時代となった。

もちろん、ホンダのCB650RやヤマハMT-07、スズキのGSX-S750、SV650、カワサキのニンジャ650など、新車でアンダー100万円のモデルはある。しかし、そのなかでも輸入車という希少性やステータス感、3気筒という特徴を考えると、トライデントはかなり商品力が高い。それが98万円という価格で登場したことは驚きであるし、ユーザーとしては単純にうれしい話だと思う。

なお、先に挙げた国産車5台は、トライデントのガチンコのライバルでもある。比較すればどれも一長一短あり、ライダーにとってはとても悩ましく魅力的なモデル群だ。それぞれの違いや特長を突き詰めていけばいくほど、トライデントの英国ブランドであったり、3気筒であることの独自性が見えてくる。単体で見ても文句のつけようがないバイクではあるが、比べて見るとまたその良さが浮かび上がる。トライデントとはそんなバイクだ。

ふたつにまとめたわりに長くなってしまったが、これまで話を語彙力ゼロにしてまとめれば、トライデント660はすごくいい。このひとことに尽きる。

何がいいってパッケージングがいい。もちろん3気筒エンジンの官能性能はたまらないものがあるし、ハンドリングもいい。ここまで来たら何かひとつくらいケチをつけようと思うが、せいぜいデザインが好みに合う/合わないとか、カラーリングが地味とか、ライディングモードの切り替え操作に少し迷ったとか、国内メーカーと比べるとディーラー網が弱いとか、そんなことくらいしかない。

ただ個人的に思うのは、ネガティブに感じる面がまったくないバイクなんて存在しないし、たとえそんなバイクがあったとしても、そんなのきっと面白くない。バイクなんて趣味の道具なんだから、当たり前だが、欲しいと思ったものを買うのが幸せへの最短距離だ。それを踏まえたうえで、僕は「トライデントはいいぞ」とささやいているのだ。

トライアンフ・トライデント公式ページ
www.triumphmotorcycles.jp/bikes/roadsters/trident