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北のボ日記 #18「北へ還れ!」

ボルボS80とともに走りに走った2,000キロ弱!
長かった旅もいよいよ帰路についた。
果たして無事に大団円を迎えることはできたのか!?

文と写真/淺川覚一朗

エンジンオイルのレベルが低下! 同等のオイルを手に入れるため、東京から横浜へとカー用品店巡りの小旅行でなんとかピンチを乗り切ったボルボ S80は横浜中華街へ。魯肉飯美味しい! ビールは我慢!

北のボ日記 #17「オイルSOS」

とにかく天気にだけは恵まれていたこのロングツーリングだったが、まとまった雨が降ってくれないと、ミシュランのオールシーズンタイヤ「CROSSCLIMATE 2」のウェットコンディションのインプレが……と焦っていたら、常磐道の守谷SA(画像下)を出るころ、雨がいきなりザッザーザと本降り! ワイパーも間に合わないような大雨の中、常磐道的にじつに正しく、周りのクルマの流れはいいペースを維持している。吸水も排水も間に合わず、濡れて真っ黒になっていくアスファルト、そして轍から生まれた水たまりは面積を広げていく──そして、“CROSSCLIMATE 2 無双”が始まった。

制限速度で走っている限り、フロントやリアが滑り出したり、ハイドロプレーン現象が起こる気配はまるで無い。なんというか、戦車や装甲車でまっすぐ走っているような剛性感がある。
このボルボ S80が四駆だということも、ウェット路面に対する強さの理由にはなるにしても、ことハイドロプレーンに関する限り、それは接地面の領域の話なので、ここはタイヤの素性の良さがそのまま現れていると言えるだろう。
スタッドレスタイヤが一般的に耐ハイドロプレーン性能を得意にしていないことを思うと、このCROSSCLIMATE 2が、高速道路の冬タイヤ規制をクリアできる“スタッドレス”でもあるということが、不思議どころか恐ろしくなってきてしまう。
ウェット路面への強さの理由は、このV字に切れ込んだトレッドパターンのデザインによる部分が大きそうだ。このシェイプ、サーキットで見られるレインタイヤによく似ている。
水たまりにドンッ! と入っていき、排水がバンッ! とシャシーやボディに当たる。そしてクルマは何事もなかったかのように直進していく。
とにもかくにもここでは、このタイヤの雨への強さが出色の出来なことを強調しておきたい。

ドライ路面の静粛性、安定性でもエコタイヤのカテゴリーのものにアドバンテージがあり、雨天でも無双レベルの強さとなると、このタイヤに穴は見つからなさそうな気がしてきた。
ただ、燃費が思いのほか伸びない。この道中、リッター10キロを少し超えるくらいで淡々と推移している。あるいは、比類無い安定性やグリップ、静粛性は、燃費性能を犠牲にしているのだろうか?
──そんな素人の思いつきは、ミシュランの担当者に否定された。 もし仮に、燃費が落ちるような特性を持っているとしたならば、ノイズや安定性、合成感といった、乗り心地、操縦性をスポイルする要素が必ずあるというのだ。
ここであえてCROSSCLIMATE 2の泣きどころを上げるとしたら、夏タイヤよりも、スタッドレスよりも上目で推移している市場価格だろう。
でも例えば、夏と冬でキッチリタイヤ交換をしている向きが、この一本で済むのであれば、あらゆるコストが割安になる。
このタイヤが、雪をどのくらい得意にしているのか、そして、不充分だという氷上性能の実際はどの程度のものなのか。この冬、北海道で充分にフィールドワークしてみよう。

雨上がりに到着した苫小牧行きのフェリーの出発地、大洗は、コンテンツツーリズムの聖地。街中が「ガルパン(ガールズ&パンツァー)」のスタンドやグッズで溢れている。JR大洗駅にも、駅員のコスプレをしたキャラクターたちのスタンドがあった。

30年も前の昔話をすると、北海道と本州を結ぶ船の便では、日本海側に比べて太平洋便のフェリーは古い船が多く、例えば夜、船尾にあるバーでは充分な会話ができないくらいにエンジンの騒音や振動で“賑やか”だったものだけれど、今は大きさも、設備も遜色のない新しい船が、太平洋側でも就航している。

車両甲板、そして客席への動線や構造を見ていくに、新日本海フェリーと商船三井フェリーの設計思想は、随分と違うようだ。ほぼ同じ積載量の船が就航しているのだけれど、一言で言うと、こちらの方が「シンプル」ということになるだろうか。

夕食と朝食は、待望のビュッフェスタイル! コロナ禍からの解放が進んでいるのを感じる。デザートまでキッチリと盛り付けて、ワンコインのサッポロクラシック生を痛飲。夕方に出た船は明日午前中、苫小牧港に到着する。

このボード(画像下右)は、カフェの軽食のもの。全て手描きで、図鑑を手本にでもしたのか、海の生き物の描写がなかなかに細かくて、しみじみ眺めてしまった。

ちなみに、この路線にも艦内にWi-Fiの用意は無く、海岸からやっと届く電波を掴もうと、乗客は窓の大きな食堂や通路になんとなく集まってくるのがご時世だなと思った。

苫小牧港到着。樽前山のシルエットが青い。北海道に帰ってきたのか、また戻ったのか、自分の中の認識が混濁しているような気もする。移住3年目、まだどっちつかずなのだろう。

そして、家に帰るまでが遠足。走行距離が1,800キロを超えたこの旅のラスト100キロの安全運転──のはずが、港のある厚真町の隣町、安平町で早速寄り道をする。
近年は、蕎麦の産地としても、美味いそばが食べられることでも認知が進んでいる北海道だが、ここは何本かの指に入るほどに、美味い。 だから例えば「富士そば」と比べること自体がナンセンスなのだけれど、新宿の記憶とセットで思い出す「富士山もり」は、多分、記憶の中の別の種類の引き出しの中に入っているのだろう。
人間が、人生の走行距離を重ねていくということは、なかなかに面倒くさいものだ。

──ただいま、北海道。

手打ちそば そば哲 本店(Googleマップ)
https://maps.app.goo.gl/hYF7MCjXee5xNgr19?g_st=ic

北のボ日記 #17「オイルSOS」

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著者紹介
淺川覚一朗
じつは旧「NAVI」当時から隅っこで書き続けている古株。「Moto NAVI」が「バリ伝」「ララバイ」を特集したときには水を得た魚になったサブカル系ライター。現在は“バイクな本”専門の書評連載「Moto Obi」を担当。一方で、北海道美唄市の「地域おこし協力隊」として同市の街おこしや情報発信に取り組んだり、地元紙「空知プレス」にコラム「地域おこしのタネ」を連載中。