MOTORCYCLE

40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #12

ついにフレームとエンジンががっちゃんこ!
ずいぶんバイクらしくなってきたXSレーサーがついに
エンジン始動!……するよね? ねぇ、するよね!?

文/冨山晶行(築地のイタリアン、トラットリアトミーナのシェフ) 写真/後藤 武、冨山晶行 アドバイザー/後藤 武

XSレーサーにフロントブレーキがつきました!

※前回までの流れはこちらでチェック
40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #11

モトナビのヒゴシ編集長と一緒にフレームにエンジンを載せたあと、ゴトーさんの紹介で八王子のミヤシタモータースさんへフロントブレーキまわりの製作をお願いに。
代表の森安さんはホットロッドカスタムショーにRD350のダートトラッカーを出品するほどのカスタムビルダー。しかも、XS650でレースの経験もあるとのこと。あとは安心してお任せすることに。
1ヵ月後に受け取りに行くと、さすがの仕上がり。しかも、不具合のあったパーツを削り出しで作ってくれたそう。ありがたや。大事なところはプロにやってもらうのが安心、安全だな。

➀LOCに参戦中の新関選手から分けていただいたカワサキ・ゼファー750用の片押しキャリパーをダブルでカッコよく取り付けてもらいました。パッドはベスラのメタルスポーツシンタードZD-CT。②ブレーキレバーはNISSINのセミラジアルポンプの19φを使用。ちょっと大きいかなと思ったんですが、森安さん曰く、横型よりダイレクト感もあるし、ちょうどいいくらいだそうです。③サンスターのフローティングディスクは5mmのスペーサーを製作してもらって固定。ディスク固定用ボルトは普通のとは強度が別物って知りませんでした。ホイールカラーも削り出しの特製品。④工房内は試作したパーツやチャンバーでいっぱい。中にはMHRのアルミタンクも。ガタが来ていたからと、フロントホイールのカラーをアルミ削り出しで作っていただきました。押し引きが軽い!

またまた新井選手のガレージへ

次の作業は配線とキャブやタンクの燃料関係。電気関係には疎いのでどうしようか悩んでいたトミヤマは、またまた新井選手を頼ってしまいました。しかも作業は夜遅くまでかかり、申し訳なさでいっぱい。

⑥せっかく塗装したフレームを傷つけたくないので養生しまくり。ヒゴシ編集長と一緒にエンジンを抱えたときは、フレームにぶつけないようドキドキしながら作業しました。ドキドキしたけど、恋ではないです(きっぱり)。⑦新井さん、何度も申し訳ない。まずはノーマルのハーネスを持って配線の相談をしたら、レーサーは配線が単純なので新規で作りましょう、と。マジで? フルトラも同じ型を取り付けたことがあるって、新井さん男前すぎ! ⑧その前に、CRキャブレターを取り付けます。それぞれのキャブ用に2股に分かれたスロットルワイヤーが、さらに押しと引きで2つに分岐している。キャブを取り付けると調整困難になるので、外してワイヤーを取り付け。⑨リンクロッドがない(構造的に付かない)ので、各ワイヤーを微調整して左右の同調を取る。ワイヤーのリンゲージが左右で形が違うので結構大変でしたが、何とか同じように開閉できました。⑩日本から海外のオークションサイトebayの取引ができる、セカイモンというサイトで購入したボイヤー社のハイパフォーマンスフルトラキット。トランジスターが青いタイプ。¥45,000! 高っ! もうお金ないよ! ⑪エンジンの左側、ポイントのブラシやカムを外して、センサーのベースを組み込みます。このベースプレートを左右に動かすことで、進角の調整が可能。取り付け時に締めこみすぎてちょっと割ったのはナイショ。⑫発電はバッテリーのみにしたので発電機は外していたのだが、点火タイミングの調整に必要なので仮装着。チェーンがまだ付いていないので、キックレバーでクランクを回して上死点を探る。⑬バッテリーからメインスイッチ、点火タイミングのセンサー、I Gコイル、トランジスターの配線を新規でサクサクと作り出す新井さん。電気配線弱者のトミヤマには理解が追い付かない。ありがたや~。

⑭IGコイルの設置場所に迷った新井さん。取付ベースを作るため、糸鋸盤でアルミ板を切り出した。ヘッドパイプの裏に取り付ける予定。しかし、何でも出てくるガレージだな。ドラえもんの四次元ポケットかな? ⑮電光ペンチでコードにギボシをカシメてどんどん配線を作っていく。メインスイッチは右側にあったスイッチボックスを流用して左に設置。タコメーターの電源用にバイパスの配線を作っておく。⑯コードの長さを決めたいので、トランジスターの設置場所を検討する。迷った挙句、バッテリーボックスに両面テープで張り付けることになった。しかし、雨の場合はどうするんだろう? 対策を考えておかないと。⑰新井さんが急遽製作してくれたIGコイル設置プレート。20分ほどで作ったとは思えない出来映え。ここからプラグコードエンジンに向かって伸びる。ただ、今回は大きめのトラブルが待ち構えていた。

ついにエンジンに火が入った! 喜んだのもつかの間……

新井選手のおかげでエンジン始動に漕ぎつけました。ドキドキしながらキックしたものの、かかる気配なし。しかも、バイク人生最高に強烈なケッチンを3回食らって完全に戦意喪失。しょうがないな、と新井選手がキックすると、数回であっさりかかりました。やった! と思ったのもつかの間、新井選手が「あ!」と叫んでエンジンストップ。え? オイル漏れとるがな! まるで焼けたピッツアに穴が開いていた時みたいじゃん! ギャフン!

⑱キットに入っているはずのプラグコードとI Gコイルを接続する金具が、本来とは全く違うものが入っていた。新井さんが同じキットを取り付けたことがなければ、発覚に時間がかかったかもしれない。⑲とりあえず、近くの車両から同じプラグコードをお借りした。これで始動できる。さらに、タコメーターの回転を取り出すギアがないことも発覚。こちらもお借りしてクランクケースの穴をふさいでおいた。⑳ついにオイルを投入する。ヤマハなので、初めはヤマハルブのオイルを入れることにした。容量は2500cc。何歳になっても初めては緊張するんですね。思い出に浸ってボーっとしいたら、こぼしそうになった(汗)。㉑入れたオイルをエンジン全体に行き渡らせるように、キック100連発。実際は100回もキックする前に自分の限界がやってきた。リアのメンテナンススタンドのサイズが合っていないみたいで、何度も倒しかけてしまった。㉒新井さんが配線に集中している間に、トミヤマはタンクにフューエルコックを取り付ける。AirTech社によるとタンクのコック取付ボルトは1/4NPTというサイズ。1/4インチでテーパー状のボルトという意味だ。㉓ガソリンの流量に定評があるピンゲル社のレーシングコック2つとシールテープを用意した。実は価格が5分の1の中華製コックも試してみたが、1/4NPTと書いてあるのにボルト穴に入らなかったのはここだけの話。

㉔シールテープまで不良品か? テープなのに裏がベトベトしてない。新井さんに報告すると苦笑しつつ、そういうものだと教えてくれた。引っ張り気味に巻いていくんだって。またひとつ賢くなったよママン。㉕燃料コックがタンクの左右にあるので、偏り防止にチューブを一本にまとめてフィルターを付け、再び左右のキャブに振り分けた。後日ゴトーさんに、レーサーにはフィルター不要と言われ凍り付く。がんばったのに……。㉖配線も済み、燃料系もバッチリ。ついにエンジンを始動することに。何回かキックしてみたが、一向にかからないどころか、盛大なケッチンを3回も食らってしまった。想像を絶する痛さに戦意喪失。もう踏めましぇん(泣)。㉗新井さんが進角を遅めに、スロットルを調整してアイドリングするように設定しなおした。プラグに火が飛んでいるのを確認した後、キックに慣れている新井さんにエンジン始動を委ねることにした。㉘何回かのキックで、ついにエンジンがかかる! やった! 1年がかりでついにエンジンが回った! 新井さん曰く、上死点を過ぎたくらいでキックが重くなるので、そこから一気に腰ごと下すのがコツなんだって。㉙パワーパイプ高橋さんのエキパイとマフラーの音に感動していると、新井さんの「ストップ! オイル漏れてるよ」の声が響く。エンジン下にポタポタと入れたばかりのエンジンオイルが! そりゃないぜ、とっつあ~ん。

取材と製作協力

ミヤシタモータース
テイスト・オブ・ツクバ界隈では、RZ250で名が知れる森安伸彦さんのカスタムショップ。XS650への造詣も深く、フロントブレーキ一式を製作してもらった。ヤマハRD350のダートトラッカー(写真下)はホットロッドカスタムショーにも出展された逸品。連絡先はあえて非公開とのこと。

次回、ついにXSが走ります!!
お楽しみに!