バイクを感じるウェアで暮らす、ということ
かつてはたくさんのバイクで賑わった街の一角に、その店はある。
ミーレスタディオン。聞き慣れない名前のその店には、
バイクウェアではない、でもバイクに乗りたくなるアイテムが揃っていた。
文/日越翔太(Moto NAVI) 写真/高柳 健
遊び場で着るための普段着
「“ミーレスタディオン”というのは僕らがラテン語をベースに考えた造語です。“ミーレ”はたくさんとか、数字の1000を意味する言葉で、“スタディオン”はスタジアム(stadium)の語源になった距離を表す単語で、1スタディオンがおよそ180m。つまり、180mの1000倍ということで180,000m。つまり180km。バイクに乗ってれば半径180kmくらいは行動範囲ですよね。そこを遊び場にしたい。そんな気持ちで名付けました」。
そう話すのは、東京・入谷でバイクやアウトドアをイメージし、パンツ、そしてブーツやシューズを中心に展開するブランド、mStadion(ミーレスタディオン)の代表を務める鈴木英明さん。確かに日常の延長としてにバイクで出かける距離感は、そのくらいのものだろう。
ミーレスタディオンが世に送り出すウェア。その最大の特徴は、普段着として成立する着心地や履き心地、シルエットの美しさにこだわり、パッドやプロテクターを備えたバイクアパレルとは一線を画す一方で、乗車時の動きやすさに注力したり、膝の内側にパッドを入れられるポケットを用意しておくなど、ライダーのこともしっかり考えた作りになっていることだ。日常生活で着られるバイク服、という表現がしっくりくる。
店内にはそういったちょうどよく肩の力が抜けたアイテムがゆったりと並べられている。そこを仕切るのが、鈴木さんとは高校時代からの友人だという店長の岡田さん。
「インスタで商品を見ました、と言ってやってきてくれるお客さんが多いです。“こういうのが欲しかったんだよ”とおっしゃって、定期的にいらしてはかなりの量を買ってくださるベテランライダーもいます」。
2020年春という、緊急事態宣言の真っ只中にオープンしたので、これ以上状況が悪くなることはないだろうと、前向きに楽しみながら乗り越えてきたふたり。話好きなふたりといると、つい話し込んでしまう。
「このあたりは昔、上野のバイク街と呼ばれていたエリアですが、僕らは世代的にその賑わいを知りません。ただ、住んでいる方は、いまでもバイクに寛容な方が多い。なので、もう一度バイク関連のお店が集まってくれれば、この街もまたバイク街として盛り上がりそうですよね」。
アパレルショップが盛り上げるバイク街。それをとても面白そうに思うのはモトナビだけではないはずだ。
元は印刷工場だったという古いビルの1階をリノベーション。ガランとした店内はインダストリアルな雰囲気を漂わせ、オリジナルのウェアに加え、セレクトしたアイテムも並ぶ。最近のイチオシはフランス軍のモーターサイクルパンツをベースにしたトラウザーズ。シルエットの美しさが目を惹くが、ライディング向けのディテールも豊富に仕込まれる。また、ミーレスタディオン別注、ジプシー&サンズのモーターサイクルジャケットなども、コーディネートの幅を広げてくれる一着として人気だそう。
Shop information
mStadion
東京都台東区下谷1-12-23
☎03-5830-3102
営業時間13:00~18:00(火、水曜定休)