CAR

北のボ日記 #4「脱げないスタッドレス、履けない夏タイヤ。」

北海道でも有数の豪雪地帯に暮らす著者。
だからこそ痛感する、タイヤ交換のタイミングの悩ましさ……。
タイヤにもクルマにもハードな試される大地、北海道の日常をつづる。

文と写真/淺川覚一朗

冒頭の雪景色は、さすがに今月6月の画像ではありません。でも、今年の4月の北海道の朝の風景だったりします。それも、山の中ではなく、平野部の。
僕が住む北海道美唄市は、札幌と、動物園で有名な旭川のちょうど真ん中あたりにある小さな街です。そしてこの一帯、空知地方は北海道の中でもとりわけ、豪雪地帯として有名なエリアです。

2019年からの冬は、とにかく雪が少なく、さまざまなウィンタースポーツの大会が中止になるほどでした。それが2020年は一転、記録的な大雪が続き、多くの気象記録が塗り替えられました。そして2021年からのこの冬です。雪の立ち上がりは遅かったものの、後半から帳尻を合わせるかのように大雪の日が続き、一冬を通した積雪深は昨冬以下でも、一日あたりの降雪量は昨年以上だった日が何日もありました。一昨年、誰もが思った「温暖化」なんてワードは「ちょっと何言ってるかわからない」ことになってしまったわけです。

駐車場に数時間停めただけで、こんなふうにボルボが真っ白になってしまったのも、子供たちが春休みに入ってからの話です。

ボルボといえばもちろんスウェーデン、北欧のクルマです。こういうシチュエーションには強そうだと思うでしょう? それが意外と、雪には弱いところもありました。

もちろん、芸術的に温かいヒーターや、暴力的なまでに強力なデフロスターやデフォッガーは、雪の降る日の駐車場で雪だるまになった状態から、出発するまでの時間を劇的に短くしてくれます──が、しかし。そのあと立ち寄ったガソリンスタンドで給油リッドを開けると、隙間から入り込んだ雪が微妙に融けたあと、中途半端に凍ったガサガサの雪がギッシリ詰まっていたりするのです。

前に乗っていたBMW 316ti(E46/5)なら、そんなことは決してありませんでした。316tiとS80を比べたとき、車格はずいぶん違うのに、設計や品質、作りに総じて甘さを感じることがあるのは事実です。
しかし、窓ガラスの氷をサッと融かし、いい感じで車内を早々に暖めてくれるタッチは、316tiにはなかったものでした。

ここでどちらが、こうした北国の日々の暮らしの中で実用的なのか、エンスー的QOLをアゲてくれるのかと考えたとき、それはボルボだということは言えます。でも他にも、例えば樹脂パーツの質感の残念さには色々泣けてきてしまうわけです。その辺の話も、追々していくことになるでしょう。
そして、今年の冬はタイヤにもハードな環境になりました。冬本番の大雪やその後の凍結はもちろんなのですが、春の気配が来ては寒が戻り、いつまでもスタッドレスタイヤを脱げなかったのです。

また、大雪すぎて排雪(除雪した雪を運び出す作業)が追いつかず、道路はとっくにアスファルトが見えるようになっても、うずたかい雪の壁がいつまでもそびえていたりもしました。

こうなると、例えば東京のように、雪が降るとき、降雪地に出かけるときに履くのが冬タイヤ──ということではなくなってきます。まだ降りそうな雪に備えて、完全ドライになったアスファルトの上を、すり減るスタッドレスタイヤ気に病みながら延々走ることになるのも、北国の日常なのです。

さて、次回はそんなリアルな春のツーリング、高速道路だけなら完全ドライ? な函館への旅の模様をお伝えします。そしてもちろん? まだまだ雪は融けきってはいませんでした……。

最後に、そんな冬と春がオシツオサレツしていた3月末、僕のS80は走行距離100,000kmに到達しました。5ヶ月で5,000km弱。これからもトラブルや故障とは無縁で、距離を伸ばしていきたいものです。ああ、そんなことは、駱駝が針の穴を通るよりも難しいことは、わかっていますが。

バックナンバーはこちら
北のボ日記 #0「さようならBMW、こんにちはボルボ」

北のボ日記 #1「インチアップに耐えられなかったアジアンタイヤの話」

北のボ日記 #2「ブレーキだけでは測れないスタッドレスタイヤの“安心”」

北のボ日記 #3「北海道のブリヂストン神話、そしてミシュラン」

著者紹介
淺川覚一朗
じつは旧「NAVI」当時から隅っこで描き続けている古株。「Moto NAVI」では「バリ伝」「ララバイ」のストーリーボードを書いたり、現在は書評「Moto Obi」を連載中。ライター稼業の一方で、北海道美唄市の「地域おこし協力隊」として業務委託を受け、同市の“役場の人”として街おこしに取り組んだり、観光情報を発信中。