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2016.02.19

「イニシャルD」は速さじゃなく、美学のぶつかり合いを描いていた。

「頭文字D」作者、しげの秀一、ロングインタビュー_前編

連載18年、コミックの発行部数は4800万部を超えるという自動車マンガの金字塔、『頭文字D』の作者、しげの秀一。
氏が描いた作品は、日本だけにとどまらず、世界のクルマ好きに愛され、多大なる影響を与えた。
連載開始の秘話から、知られざるエピソード、藤原拓海の未来の話に至るまで、今だからこそ語れる貴重な話をじっくり伺った、“イニD”ファン必読のロングインタビュー。

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バリ伝からイニDへ
四輪マンガは描きたくなかった

-しげのさんはあまりメディアに出られないという印象があります。今回はとても貴重な機会を頂いたと思っています。

作者がマンガの世界観を語るのは、いいことじゃないような気がしているんです。制作サイドの苦労話や補足なんかを本編以外のところで説明するのってNGな気がして。クリエイターとしてね。『頭文字D』はもう完結しているので、いま語るのはいいんですけど、進行中にうまく描けていない部分をバックヤードでフォローしちゃうような自分はイヤなんですよ。作品は読んでもらうのが全てだから、そこで感じてくれたものだけで勝負しなきゃいけないと思うんですよね。もちろん言いたいことは山のようにあるんだけど(笑)。

-僕が初めて しげのさんの作品に出逢ったのは、二輪マンガの『バリバリ伝説』なんです。 しげのさんとしても『バリ伝』が空前のヒット作となった後ですから、『イニD』はいろいろな思いがあって始まったのかなと思うんですが。

『バリ伝』連載当時は僕も若かったですし、二輪のやんちゃなワールドが本当に好きだったんですよね。でも暴走族のほうに行くんじゃなくて、ストイックにコーナーを攻めるのに美学を感じていましたね。少年マンガでは成り行き上、暴力的なシーンはたまに出てきますけど、そこはぜんぜん見せ場ではなくてね、ケンカでの勝った負けたじゃなく、あくまでオートバイのライディングの技術で勝った負けたで読者に共感してもらいたいというのを一生懸命考えてました。

-二輪の『バリ伝』がヒットして四輪へ、というのは必然的な流れだったんですか?
 
いま振り返ればそう見えるかもしれませんけれど、そこに至るまでには紆余曲折が……。僕の中では二輪を描き終わった後、またモータースポーツを描くということは考えてなかった。仲のいい編集者には『四輪好きなんだから、二輪よりそっちを描けばいいじゃない』とも言われたんだけど、じつは僕の中ではすごく抵抗があった。むしろ『四輪は描きたくない』と思ってたんですよ。

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-それはなぜですか?

『バリ伝』を書いてるときに起きたことなんですけど、大好きだった二輪の雑誌を見たりするのがすっごく憂鬱になっちゃうんですよ。趣味と仕事がどっぷりリンクしちゃうので、逃げ場がなくて辛かったんです。だから四輪を手掛けたら、またそうなってしまうんじゃないか、というのがひとつ。もうひとつは作家として、モータースポーツしか描けない、偏った表現しかできない作家だと思われるのがイヤだったし、自分自身でそう思うのもすごくイヤだったんです。いろんなものが描けるマルチな表現者を目指したいと。いま思えば若気の至りなんですけど、そう思う時期があるんですよね。恋愛だったり、青春だったりスポーツだったり、テーマはいろいろあるのに、どうしてモータースポーツだけに自分を限定しなきゃいけないのかな、と。

-バリ伝とイニDの間に陸上マンガなどがありましたよね。

陸上のやつを含めて、その間に失敗作が3本ぐらいあります(笑)。だから四輪を描くにあたってはすごく追い詰められた心理だったんですよ。いよいよ、しょうがないなと。贅沢言ってられないし、マンガ家として終わってしまうよりは、描けるものは描いた上で、それでダメならあきらめよう、ぐらいのね。

-それほどのプレッシャーがある中で始まったんですね。

いやー、ありましたね。本当に3本続けて失敗すると。デビュー作がたまたま当たったからいい気になってたけど、そんな甘いもんじゃないんだな……という反省も込めて、もう、これでだめならしょうがない……ぐらいの覚悟で『イニD』をスタートしました。

-これはヒットさせるという覚悟で始めたということですか。

ヒットするしない、ではなかったですね。とにかく続いてくれることが一番というか。続けば職業として成立しますし。『バリ伝』以降の作品は、いま振り返ると心の底から描くのが楽しいというものではなかったんです。描いていてもなんかこう、よそよそしいんですよね。その点、『イニD』はスタートしたときから描くのがすごく楽しかった。『ああ、そうだ。オレ、こういうの描きたかったんだな』って。ちょっと後悔しましたけどね。もっと早く描けばよかったなあって。

……後編へつづく。

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しげの秀一/Shuichi Shigeno
1958年生まれ。新潟県出身。1983年~91年まで少年マガジンで『バリバリ伝説』を連載。当時のバイクブームの牽引役となった。1995年から2013年までヤングマガジンにて『イニシャルD』を連載。マンガだけでなくアニメ、映画としても大ヒット。全世界に影響を与えた自動車マンガの金字塔となる。現在はヤングマガジン誌上でJK野球マンガ、『セーラーエース』連載中。

語り/しげの秀一
聞き手/河西啓介(NAVI CARS)
写真/三浦孝明(人物)、小山幸彦(STUH)( 本)

→「頭文字D」作者、しげの秀一、ロングインタビュー_後編

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