MOTORCYCLE

40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #9

ようやくヤマハXS-1のエンジンとフレームが合体!
……ってご無沙汰しすぎですよね、テヘペロ。
料理人トミヤマは本当にサーキットデビューできるのか?

文/冨山晶行(トラットリア築地トミーナ) 写真/後藤 武、冨山晶行 アドバイザー/後藤 武
協力/Keep’s SUPER CRAFT、POWER PIPE、筑波サーキット

※これまでの展開はこちらでチェック!
40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #1 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #2 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #3 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #4 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #5 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #6 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #7 40半ばのシェフがおんぼろバイクでサーキットを目指す件 #8

Keep’sでステップやカウルステーを製作セヨ!

突然ですが、トミヤマは職人さんが大好き。あっ! 性的にじゃないよ。紳士服の仕立て職人だった母方の祖父の影響でしょう。小学生の頃は、引退していた祖父の散歩のお供で、日本橋や神田の問屋さんやテーラーによく付いて行った。話し込む祖父たちを尻目に、働く職人さんを見ている(というより邪魔をしてたんだろうな)のがおもしろくて。ハンチクな仕事(いい加減な仕事の意)、なんて言葉もこのころ覚えたっけ。
「キープスのTちゃんは、凄腕なんだけどなかなか仕事を受けてくれないんだよ。ステップ類の製作を断られるかもしれないけど、それでも行ってみる?」というゴトーさんの話を断る理由なんか、これっぽっちもなかったのです。断られたって、ネタとしてはおいしすぎじゃないですか。ドMの血が騒ぐ。

善は急げと、前号でお世話になった新井さんのお宅から、バイクとパーツを抱えて直接茨城県のキープスに移動することに。「住所とか非公開だから、俺のシェビーバンの後ろについてこい!」といつも以上に漢らしいゴトーさんの後を追いかけること約1時間。ほんとにこの先にバイク屋なんかあるの? という山の中にズンズン入っていく5.7L V8のゴトーバン。そのテールランプに、不安いっぱいで追いすがる。すると突然開けた場所に佇むポツンと一軒家。まさかココっすか! ゴトーさん!

ビクビクしながらクルマから降りると、軒先に大好きなヤマハXT500とバイソンが! うひょーいいもん見た、と気分アゲアゲのまま後ろを振り返ると、すでにウチのXS-1を見分しているTさんがいらっしゃる。とりあえず職人さんには元気よく挨拶だ。その後は正直に、自分はなんにもわかっていないけど、とにかく旧車でレースがしたいというようなことを話した、気がする……。実はキンチョーして何を話したかよく覚えてないけど、「このエンジン、美しいよなぁ……」とエンジンをさすりながら、おもむろに「いいよ、やるよ」と言ってくれたTさんの顔は忘れられない。

①AirTech社製のフロントカウルは美しいアルミ製ステーでフレームにマウント。取付け用の穴は極力新規に開けずに、既存の穴を工夫して流用するか、溶接でステーを製作して取り付けられている。ちなみにスクリーンは専用品ながら合わなかった(!)のか角度を工夫して取付けられていた。②キットのフェンダーはタイヤに対して、どう見てもオーバーサイズだったが、絶妙な取り付けで全く気にならなくなった。③ラバーマウントで振動対策バッチリのタコメーター。④レーサーに必須のハンドルストッパーも新たに溶接してもらった。

⑤シート下にカウルのマウントが新たに溶接されている。ちなみにフレーム後端のカウル固定ボルトの受けはすべて削り出し。⑥バッテリーケースの下側はオイルキャッチタンク。こちらも当然ワンオフ。⑦バッテリーボックスとオイルキャッチの裏側がリアフェンダーを兼ねている。⑧リアブレーキ用のロッドとの位置関係も考慮して、ステップはこの位置に。万一転倒してもいいように、汎用品に多く使われているM8ボルトで固定。安易にプレートを介して固定せずに、リンクの取り回しで美しく仕上げられている。

それから、流用するバックステップを届けたり、カウルの位置決めをしたりと何度かお邪魔させてもらうたびに、Tさんとバイクやクルマの話で盛り上がった。だから、XS-1を引き取りに行くときは嬉しい反面、なんとなく寂しい気持ちもあったのだ。実車を見るまでは!
とにかく細かい仕事ぶりに大興奮で、「うおー」とか「スゲー」を連発してちょっと頭悪そうだったかもしれない。リリー・フランキー風に言うと、座りションベンだ。もう、おんぼろ号なんて呼べない。親戚のハナタレ小僧が、しばらく見ない間に大人になってたみたい。ゴトーさんもニヤニヤしながら「なんとなく小野(勝司)さんのブリティッシュレーサーみたいじゃん。ぱっと見どこのマシンかわからないのがイイよな」と上機嫌な様子。ちなみに小野勝司さんとは、かつて発行されていたバイク雑誌「クラブマン」の初代編集長で、すでに鬼籍に入られている我々の大先輩であります。

オジサン3人でバイクを囲んでキャッキャした後、「じゃ、このまま厚木のパワーパイプさんに行くぞ」とゴトーさん。聞けば、パワーパイプの高橋良夫さんはチャンバー造りの名人なのだけど、ゴトーさんが相談したら4ストのマフラーもやってくれるとのこと。Tさんにお礼を言い、23年落ちの初代ステップワゴンにXS-1を積み込み、いざ厚木。

取材と製作協力

Keep’s SUPER CRAFT
住所、電話番号非公開。80年代のテイストオブ フリーランスのマシン製作者にその名を見ることができる。

次回は#10「POWER PIPEにてマフラー製作をお願いセヨ!」です。
お楽しみに!